第14話 『生きる』ということ

☆(糸魚川モナ)サイド☆


絶対に良い人間じゃない。

誰の事かと言われたらアタシに決まっている。

アタシは.....世間に嫌われる所謂(不良)って奴だ。

社会のお荷物ってやつだ。


アタシの居場所は永遠に無い。

親父はパチンコ中毒でギャンブル依存症でありこの世から死のうそして消えてやろうと思った。

そうずっと心の中で思っていた。

そしたらアタシは夏川康太という今まで会った事ない人間と出会った。


彼はこんなアタシを救ってくれた。

社会のゴミクズのアタシを救ってくれたのだ。

そして糸魚川家を救ってくれた。

そんな彼がアタシは.....多分。

あくまで多分だ。

だけどアタシは.....。



視聴覚室の横で授業を受ける彼を見てみた。

アタシはあくまで不良だった。

そして(ドラゴンライダー)と呼ばれる引っ越す前の中学時代の不良集団のカシラをしていた過去もある。

当然タバコも吸ったりもした不良だった。

その事は葬り去りたい過去だが。


アタシはそんな事もあり高校時代は真面目になろうと決めた。

そしてこの土地まで来たのにまた昔の奴らに絡まれた。

そのアタシを康太は救ってくれた。

彼はアタシにとってはかけがえのない存在だ。

それから彼が居ないと心苦しくなってきている。


「どうした?」

「.....い、いや。何でもない」


小声で康太が聞いてくる。

アタシは慌てながら赤くなって否定する。

だんだん気が付いてきた。

だけどアタシは康太を好きになったとして.....康太には迷惑しかかからない。

でも消える前に康太には伝えたいって思う。


そしてあっという間に授業は終わった。

それからアタシ達は立ち上がる。

そうしてから教室に戻る為に教室から出た時。

段差に躓いた。


「おっと。危ねぇぞ」

「.....!」


康太がアタシを支えてくれる。

アタシはその事にボッと赤面しながら「あ、ありがとうな!」と告げた。

そして「もう触らなくて良いから」と否定する。


しかしまあ嘘ばかりだな。

アタシはもっと触ってほしいって思う康太に。

(全くアタシは)と思っていると康太が聞いてきた。

「そういや」という感じでだ。


「本当に良かったのか?」

「?.....何がだ?」

「お前がミスコンに出るの。お前に大好きな人が居るってのは分かるが」

「ああ。その事か。良いんだアタシは。その人に伝えたいんだ。この気持ちを」

「.....お前がそんなに好いているってのも嫉妬ものだな」

「お前.....そ、そんなに嫉妬するのか?」


「そりゃそうだろ。嫉妬するさ」と答える康太。

「何故そんなに嫉妬するんだ?」と聞いてみると康太は「親の感情かな」と答えた。

うん.....そういう気持ちか。

残念としか言いようがないな。

そう思っていると康太がボブヘアーの女子に話しかけられた。


「ハロハロー。初めまして!」

「お前は.....確か矢住だっけ?」

「そうそう!矢住望(やずみのぞみ)だよ。クラス委員の」

「多分こうして話したのは初めましてだな?どうした?」

「いやいや。さっき聞いちゃったんだよねぇ。.....モナさんだっけ?出るんだよね?ミスコンに」

「.....ふぁ!?」


ボッと赤面するアタシ。

そして真っ赤になって「ぬ、盗み聞きするな!!!!?」と大慌てになる。

すると矢住は「あはは。ごめんね」とニコニコする。

それから「私は.....応援したいな。モナさんの事」と言ってくる。


「.....な、何故アタシを応援するんだ?」

「モナさん。貴方は確かに不良ってイメージがあるけど。人は外見じゃない。.....最近貴方は慈善活動をよくやっているよね。陰ながらのイメージが覆るよ。例えばよく通路のゴミ拾いとか校門前の落ち葉を掃いたり.....貴方の活動は.....色々な人の助けになっている。.....その事はみんな知ってきている。だから私は応援しているの」

「.....いや。訳がわからねぇ。そんなの慈善活動じゃねぇよ。当たり前の事をしているだけだっつーの」

「でもそれを当たり前と認識するのは難しいよ。.....貴方は立派な事をしているの。それを自覚してね」


「慈善活動=当たり前の事じゃない。それは誰にでもできる事じゃない。貴方は心から立派な人だね」とアタシに言ってくる。

それは康太を見ているからやっているだけであり。

なんのあれでもない。

だけど康太は目を丸くしながら「お前.....変わったな」と話しかけてくる。

すると矢住は「ところで話は変わるけど」と言ってくる。


「2人はもしかして付き合っているの?」

「.....は!!!!?!!?!!んな訳あるか!!!!!」

「あれ?でも夏川くんもモナさんも何か.....モテそうだけどね」

「モテる訳ないだろ。.....それにできたとして.....彼女というのはもう懲り懲りだ」

「そっか。.....でもそれもまあ人生ってやつかな?」


康太は首を横に振る。

それから苦笑いを浮かべた。

するとチャイムが.....鳴ってしまう。

矢住が「アレェ!?もうそんな時間かな!?」と大慌てになる。

そしてアタシ達に「じゃ、じゃあ戻ろっか!」と慌てる。


「戻るぞお前ら!」

「そ、そうだな!急ぐぞ!」

「私はクラス委員なのに何をしているんだか!」


そんな感じでアタシ達はそのまま駆け出してから教室に戻る。

先生にそれなりに怒られたが。

何か学校に対するイメージが変わった気がする。

矢住のお陰で.....全てが変わった。

教師もウザいって思っていたけど.....そっか。


アタシはこの場所で『生きていて』良いんだ。


そう思えた気がした。

そしてアタシはクラスを見渡す。

世界が違って見えた気がした。

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