第13話 溢れる想い

☆(夏川康太)サイド☆


不良に囲まれていたモナを救出した。

それから俺達は逃げる様にその場を去ってから学校に登校する。

横の席に座るモナ。

だけどその顔は何か.....赤くなっていた。

え?!もしかして熱でもあるのか?


「なあ。もしかして風邪がうつったか?」

「ち、ちげぇよ!!!!!話しかけるな!?」

「???.....あ、ああ」


「あ、す、すまん。その。今はちょっと話しかけんな」という感じになるモナ。

俺はその顔を見ながら心配になったが。

(モナがそう言うなら)と思い話しかけるのをやめた。


それから俺達はホームルームを受ける。

そして2時間目ぐらいになった時。

移動教室だったがモナがようやっと口を開いた。


「すまん。黙れとか言ってしまって」

「ああ。そんな事か。気にすんな」

「.....なあ」

「.....何だ?」

「お前って彼女作る.....事ってあるか?この先」

「いきなりだな?俺はないな。もう彼女は作らない」

「そうか」


「.....だけどその言葉を聞いて安心したぜ」とモナは俺を見てくる。

(どういう意味なのか全く分からないが.....?)とそれを考えながら歩いていると.....目の前から声を掛けられた。

それは新聞部と書かれた腕章をつけている女の子。

二つ編みのお下げで丸メガネを着けている女の子だった。


「すいません。もしかしてあなた方は夏川先輩と.....糸魚川先輩ですか?」

「ああ。そうだな。.....君は?」

「あ、はい!初めまして!私は須藤夏菜子(すどうかなこ)って言います。1年生です」

「.....須藤さんが何の用事だ?俺達に」

「実はですね。今度パンフレット用などのコンテストをやります。それからミス・コンテストをやりたいんです。生徒側の企画で」


「ミスコン?」と俺は目を丸くする。

すると須藤さんは「はい」と笑顔で答えた。

柔和な笑顔を浮かべる。

そしてモナを見た須藤さん。

モナは一気に睨んだ。


「一匹狼さんの呼称があります。.....でも私は糸魚川先輩の別の顔も知っているつもりです。言葉遣いは荒いけど優しいって」

「へ?.....い、いや。アタシは優しくないぞ」

「またまた。謙遜ですね。.....私が得た情報は嘘は吐きません」

「な、何だ。変な奴だな!」


モナは困惑する。

そして須藤さんはそんなモナに構わずジロジロ見つめる。

「うーん!ばっちぐーです。やはり可愛いですね!」と満面の笑顔になる須藤さん。

それからモナに対して「ミスコンに出ませんか?是非」と話してきた。

やはりそういう事か。


「いや.....アタシはいいよ。可愛い訳じゃない」

「そうですか?出てくれませんか?」

「アタシなんかが出ても.....あ、アタシは.....」


すると須藤さんは「そうですか」という感じで直ぐに諦めた。

それから「ミスコンでは告白大会もありますしね。無理にはお誘いしません」と苦笑してから頭を下げる須藤さん。

(成程な。それでか.....って.....何?告白大会?)と思っているとモナの動きが何かピタッと止まった。

そして須藤さんに「それは何だ?」と聞く。


「え?あ、告白大会です。好きな男性に告白できるチャンス大会みたいなものですよ。全校生徒の前ですけど」

「.....」


何故か悩んでいるモナ。

それから眉を顰めている。

(何故そんなに悩んでいるのだ。断れば良いのに)と思っているとモナは「な、ならミスコンに出る」と須藤さんに告げた。

俺は唖然としながら「へ!?」と思った。

そしてモナを見る。


「待て。色々と大丈夫なのかお前」

「な、何がだ。康太」

「いや。告白大会があるぞ。そんな無理しなくても。ミスコンって何をさせられるかも分からないしな」

「良いんだ。アタシはそれでも参加したい」

「.....」


とんだ成長だ。

思いながら俺は当初は心配していた途中から笑みを浮かべた。

須藤さんはまさかの展開だったのか嬉しい様な顔をしていてから「じゃあ参加希望を出しておきます!」と笑顔になる。

そして須藤さんは「すいません。あと3分で授業が始まりますので失礼します!ありがとうございました!」と俺達に口角を上げて固く握手を交わしてからそのまま頭を思いっきり下げて去って行った。


「.....まあ何つーか。人と関わるのが苦手じゃなかったのか?お前」

「良いんだ。ミスコンはどうでも良い。アタシはな。.....だけど、こ、告白大会にかなり重大な意味がある」

「は?お前は好きな人が居るのか?」

「そう.....いや!?そんな訳あるか!!!!!居ない!!!!!」

「いやどっちだよお前。参加するんだろ?告白大会」


俺は苦笑いを浮かべながらモナを見た。

(そうか。モナに好きな人ができたんだな)と誇りに思える。

(何かちょっと寂しい感じはしたが.....それもまた人生だな)とそういうお年寄りの様な感じもしてしまった。


だけど親が子を見守る様なものと思えば納得がいった。

もうきっとモナは大丈夫だろう。

この先も.....な。


「モナ」

「な、何だ」

「お前本当に成長したな。.....俺は嬉しい」

「.....いや。お前は母親か?アタシは子供か?ドン引きだ」

「俺はお前の親代わりと心から思っているが?」

「.....そ、そうか。しかし親じゃなくてアタシは.....」

「はい?何だ?声が小さいぞ」

「良いんだよ!聞こえなくてな!!!!!」


「全く!女の盗み聞きをするとかお前は最低だな!!!!?」とそのまま駆け出して行くモナ。

(何だってんだ?)と思ったがその背中は何だか嬉しそうに見えた。

かなり歓喜に満ちている様なだ。

意味が分からないな。

相変わらず裏表の激しい野郎だ。

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