第11話 暗い部屋に置き去りにされた過去

☆(夏川康太)サイド☆


どういう気持ちなのだろうか。

「いきなり何を言っているのか」と言われるかもしれないが俺の気持ちだ。

モナを見ていると不思議な感情に包まれるのだ。

それは簡単に言えば好きとか恋をしているとかじゃない。

アイツを見ていると心地が良いのだ。


「康太」

「.....何だ。モナ?」

「アタシは本当にお前が心配だ。.....だ、だから気を付けてくれ」

「ありがとうな。そう言ってくれて。感謝しかないよ」

「どうしてこんなに心配するのか分からないけど。だけど心配だ」

「.....」


モナは俺を見つめながら心配げな顔をする。

俺は「お前が優しいからじゃないか?」と告げた。

するとモナは「違う」と否定をする。

それから俺の右手を左手で握る。


「アタシはお前が消えるのが怖い。.....お前という人が消えるのが」

「モナ.....」

「.....ま、まあそういうこった!ね、寝るか!」


そう言うモナ。

俺はその姿に「なあ。抱きしめてみても良いか?」と言ってしまった。

その言葉にモナは固まってから「何で!?」と愕然とする。

そして真っ赤になっていくモナ。


「な、何でだよ!アタシなんかを抱きしめても意味ない.....」

「そうだな。意味はないかもしれない。だけど俺はお前を抱きしめたくなった」

「わ、訳が分からん!変態か!?」


(そうだな。確かに変態だ)

そう考えながら「すまん。迷いごとだ」と苦笑いをした。

それから「じゃあ寝るか」と立ちあがろうとした時。

袖を握られた。


「.....い、一回だけだぞ」

「.....マジで?」

「マジで。一回だけだぞ」

「.....」


そしてハグの姿勢になるモナ。

俺はその姿にボッと赤面しながらそのまま優しく抱きしめる。

するとモナが「お前は赤ちゃんか!?全く!」とブツクサと文句を垂れた。

それからモナはそのまま離れてから俺を見てくる。

見つめ合う感じになった。


「.....おい。見つめるな」

「.....それはこっちのセリフだぞ」

「.....」

「.....」


潤んだ目をしているモナ。

艶やかな唇。

ノーメイクの素肌。


何でこんなにもコイツが可愛いのだろう。

そんな事を考えながらだんだん近付く様に居るとモナは「ね、ね、寝るぞ!!!!?」といきなり大声を発した。

それから階段を駆け上がって行く。

俺は「お、おう」と反応しながらその姿を見送った。


「.....うーぬ?俺もとち狂ったか?」


そんな事を呟きながら俺は「そういやアイツの寝室はどこに決めたっけ?」と思いながら俺の部屋に向かうとモナが横になっていた。

漫画を読んでいる.....いや待て。

何をしているんだコイツは。


「お前な!この部屋で寝るな!寝室を今から決めるぞ!」

「あ、アタシを暗い部屋に1人にする気か!?そんな男だったとは!」

「何だよお前!小学生じゃあるまいし!」

「そ、そうだけど.....」


何でこんなにしゅんとするんだ。

俺は(?)と思いながら見ていたがやがてハッとした。

そしてジト目になる。

「お前もしかしてお化けとか苦手?」と聞いてみるとモナはビクビクッとした。

コイツは子供か?


「.....お、お化けなんか怖くないぞ!1人で寝れる!」

「嘘吐け。無理はするな」

「おう!だ、だからその。で、出て行ってやる!」

「できるものならやってみな。.....お前は絶対に暗い場所が苦手なんだ」

「.....」

「.....やっぱりな」


「まあそれには原因があるけどな」とモナは呟く。

それから俺を真っ直ぐに見てくる。

「ナナも苦手なんだ。暗い場所が」と複雑な顔をしながら言った。

その言葉に首を傾げた。


「.....全て親父が悪いけどな。幼い頃のアタシを放ってパチンコに行ったから。暗い部屋にアタシをほっぽりだしてな」

「.....そうだったんだな」

「アタシは何時間もそうされてそれ以降暗い場所が苦手だ」

「.....そうか」


俺は盛大にため息を吐く。

「じゃあ仕方がない。一緒に寝るか?」と聞いてみる。

するとパァッとモナは顔を明るくしてからハッとして「アタシを誘惑しようとしても無理だからな!」と胸を隠す仕草をする。

「んな事しない」と俺は話した。


「お前にその様な事をする根性は俺にはない」

「.....そうか。それはそれで残ね.....いや!そんな事はないからな!」

「何を言っているんだお前は」


そして横になる俺達。

時刻は既に23時を回っている。

俺はモナの為に部屋の電気を点けたまま寝る事にした。

そう考えつつ床で寝るとモナが「いやちょっと待て何でそこで寝てんだ」と言ってくる。

冗談だろ。女子と一緒のベッドで寝れるか。


「お前と一緒には寝れない。.....お前は女子なんだぞ。仮にも」

「じょ!?.....ま、まあな。それは.....まあ確かにな。だけど床で寝るなんて」

「良いからそこで寝ろ。お前は客人だ」

「あー。はいはい。そうかよ」


それからモナは不貞寝の様に寝る。

そして30分ぐらい経って寝言?で涙声がした。

「暗い.....。怖い」という声が、だ。


俺はその言葉を聞いてから寝れなくなる。

(うーぬ)と思いながら俺はモナの横で寝る事にした。

(仕方がないな全く。子供かよ)と思った。

だけどコイツも頑張っているからな。

だからこうして頭を撫でている。

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