第9話 俺はジョークが嫌いだ
☆(夏川康太)サイド☆
何かを知ってそうな気がする。
彼女というか糸魚川がだ。
俺はソフトな感じで追求してみたが残念ながら彼女は一切答えなかった。
どの様な情報かといえば愛花の事に関しての情報だ。
糸魚川にそんな接触はありえないと思うが何か知っている様な汗をかいているから.....気になった。
「今日はありがとうな」
「な、何が」
「看病してくれてありがとうなって意味だ」
「あ、アタシはお前に死なれたらアタシが迷惑だから看病したまでだ。だからそんな事を言われる筋合いはない」
「いやいや素直になれよお前も」
そんな言葉を交わしながら俺達は夕食を食べた皿を洗う。
今日の夕食はオムライスだった。
俺がそこそこ作れる料理であった。
糸魚川は「ありがとう」と言いながら食べてくれた。
「ところでなんだ。風呂溜めてやろうか?」
「いきなり風呂の話をするんじゃねぇ!あ、アタシを匂ったのかお前は!?お前は変態か!?そういえばお前は臭いな!風呂に入れよ!?」
「病み上がりなんだぞお前.....」
「関係あるか!入れ!」
「お前な」と言いながら俺はピンときた。
そしてニヤッとしながら糸魚川を見る。
糸魚川はビクッとしながら俺を見てくる。
「な、なんだ」という感じでだ。
「一緒に入るか?風呂」
「は!?お前はへ、へ、変態か!?」
「だってお前が入れっつったんだから」
「そういう意味じゃねぇよ!!!!!この変態!悪魔!性悪!」
「ははは」
俺は苦笑いを浮かべながら糸魚川を見る。
だが。
糸魚川はいきなり皿を置いてモジモジし始めた。
それから俺を真っ赤になって見上げてくる。
そして「なあ。冗談抜きで風呂に一緒に入るか?」と言ってくる.....は!?
「だってお前は病み上がりだ。.....だ、だから世話しないと」
「冗談に決まっているだろお前!そんな真似できるか!」
「あ、アタシだってめっちゃ恥ずかしいんだぞ!そんな冗談を言うな!」
「全くお前は」
「全くお前と言うやつは!」
そんな感じで息切れするまで話し合ってから俺達は顔を見つめ合う。
それからぶっと吹き出してからクスクス笑い合った。
何というか楽しい奴だなコイツ。
以前と大違いだ。
「なあ。糸魚川」
「何だ?夏川」
「お前はどうして自殺をしたんだ」
「.....簡単に言っちまうと人生を終わらせたかったんだ。親父に束縛される人生が嫌いだった。そしてアタシは.....役立つのクソ野郎だったから消えた方がマシかって思ってな。そしたらお前が助けた。.....だから」
俺を見上げてくる糸魚川。
それからジッと見つめてくる。
「なあ。これ全ての責任取ってくれるか?」という感じで話してきた。
俺はボッとしながら「し、しかし」という感じになる。
すると糸魚川はクスクスと言ってから吹き出した。
「お前は可愛いなぁ!ジョークに決まっているだろ!」
「そうかよ.....」
「.....あ?何だよ」
「ジョークね.....そうか。ジョークねぇ」
俺は糸魚川を見る。
そして歩み寄ってから糸魚川に迫る。
糸魚川は何かマズイものを見たかの様にハッとして後退りをした。
それから遂に壁際まで追い詰められた。
俺はその姿に台所の壁に壁ドンをして糸魚川を見下ろす。
糸魚川は俺よりも身長が低いので簡単だ。
「.....糸魚川。俺はジョークが嫌いだ」
「そ、そうか!.....そ、それはすまなかった!ど、退いてくれるか!?」
「退かないぞ。俺がわからせてやる。お前をな」
「い、いきなり何を言ってんだ!じょ、ジョークだよな.....?」
「ジョーク?ジョークなんて言ったか?俺が」
糸魚川の目が潤む。
それからアワアワし始めてから真っ赤になっていく。
「や、やめてくれ」という感じで目を回し始めて瞑った。
俺はその反応にフッと鼻で笑ってからそのまま立ち退いた。
そして「これもジョークだ。分かったらもうするな」とニヤニヤする。
糸魚川はビックリしながら目をパチクリした。
眉を顰める。
「またか!お前マジに性悪だな!」
「これに懲.....」
そこまで言って怒った糸魚川が詰め寄って来て足元の布で滑らせた。
俺は慌てて受け止める。
そして俺を押し倒す形になった挙句。
俺に唇同士でキスをした。
俺を押し倒した糸魚川。
タオルが舞い散る。
まさかの事に俺と糸魚川は「!!!!?」という感じになった。
糸魚川はキスを止めて慌てて立ち退く。
「何をするんだお前は!?」
俺は唇を触ってから.....糸魚川を見る。
糸魚川はヘナヘナと萎れていた。
まるで乙女の様に。
どこぞの花嫁の様な感じで萎れている。
な、何だコイツの反応は。
「糸魚川?」
「.....」
「.....糸魚川さん?おーい」
「き、キスを.....しちまった」
糸魚川はボーッとする。
俺はその姿を見ながら糸魚川にまた声をかける。
すると糸魚川は「な、何だ.....よ」という反応を見せた。
そして潤んだ瞳を向けてくる。
「.....今のは俺のせいだが不慮の事故だ。その。すまん」
「い、いや。アタシも悪い。すまん」
「.....」
「.....」
気まずいな。
俺は考えながら「さっさと皿を片付けようぜ」と告げる。
すると糸魚川は俺の言葉にビクッとしてから「そうだな.....」と小声で言う。
それから片付けを再開した。
だけど糸魚川は一言もその間言葉を発さなかった。
処女だったからその分もあり。
やはりショックだったのだろう。
好きでもない男とのキスはだ。
ミスとはいえ本当に申し訳なかった。
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