第8話いつもの仕事帰り

先日の不審者と間違われた事をきっかけに、もうあの様な事はするまいと、誓いお茶とサンドウィッチを買いにコンビニへ向う。

店内は、客が数名。

王子様はこの日はレジに立って居なかった。

まぁ、もう、叶わぬ恋と理解したので、レジの列に並んだ。

レジは1つしか空いておらず、竹内は4番目に並び、列に並んだ。

すると、バックヤードから店員が出てきて、

「お待ちのお客様どうぞ〜」

と、言った。

それは、王子様の新田さんだった。

順番が良かった。

竹内は新田のレジ前に立つ事が出来た。

「竹内さん。先日はすいませんでした」

と、突然、新田が謝ってきた。

「な、何の事ですか?」

「不審者騒動です」

竹内は、顔を真っ赤にした。

「あ、あれは、誤解です」

「知ってますよ。警察官から、待ち合わせだと聴きました」

「すいません」

新田は、エコバッグに商品を入れてくてた。

「竹内さん。また、来て下さいね」 

「は、はい」


竹内は天にも昇る心地だった。

【YES!YES!YES!YES!】

きっと、王子様は私にメロメロなのね。

今日の夜勤は新田さんだ。夜中に、また、会いに行こう。

好感度を上げる為に、ちと寒いがスタイリッシュな格好で。

竹内は、どちらかと言えば美人の部類に入り、スタイルもバツグンだった。

でも、男と交際した経験は無い。


夜中、2時。

服の下に、貼るホッカイロを見にまとい、曲線美を表す為にタイトな服でコンビニへ向かった。

「いらっしゃいませ」

店内は、竹内1人だった。

「こんばんは、新田さん」

「こ、こんばんは、竹内さん」

竹内は適当な飲み物をカゴに入れて、レジに向かった。

作戦はこうだ。靴紐を結び直すためにかがみ込んだ時に、胸の谷間を見せつけてやろうと。

このハウトゥー本は、馬鹿作家の羽弦トリスの「パブロフの犬は喫茶店にいる」だった。

「竹内さん、寒いないですか?」

と、新田。

「ううん、暑いくらいですよ」


竹内は、ここだ!と、判断して、

「あっ、靴紐が」

と、言ってかがみ込もうとした。


ブッ!


ビクッ!


竹内は放屁してしまい、そして自分自身がビックリしてしまった。

「た、竹内さん。260円になります」

竹内は無言で小銭を渡し、無言でコンビニを去った。

策士策におぼれるとは、この事。

今までの積み重ねが台無し。

今後、どんな格好しても、アプローチを掛けても、【屁こき女】の汚名は消えない。

あんな、誰もいない店内で放屁して臭いも相当なモンだった。

竹内、ガンバレ!竹内、ガンバレ!


明日の朝、内田友美に連絡しようと思った。

土曜日の夜中の話しである。



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