エピローグ ~『三度目の正直』~


 呪いが完治し、すべての騒動にケリが付いたエリスたちは、屋敷の近くにある自然公園を訪れていた。


 中央に大きな池のある閑散とした公園は、初デートの頃から変わらない。ベンチに腰掛けながら、水鳥が気持ちよさそうに泳ぐ光景を眺めていた。


「時間がゆっくり流れていると錯覚するほどに静かだな」

「アルフレッド様と二人っきりで過ごせるので、私はお気に入りの場所です」

「にゃ~」

「ふふ、シロ様のことも忘れていませんよ」


 エリスの膝の上でシロが丸まっている。人混みが苦手なのはシロも同じなのか、この公園の居心地に満足しているようだった。


「それにしても、色々なことがありましたね」

「最終的に死人が出なかったのが何よりだな」


 重症を負っていたケビンも、エリスの回復魔術で一命を取り留めた。婚約破棄されたとはいえ、死なれては目覚めが悪い。それに父を殺人犯にしたくもなかった。


(ただミリアを殴った罪で投獄されたので、ケビン様にとっては手放しで喜べないでしょうね)


 ケビンはミリアと離縁している。つまり伯爵令嬢に暴力を振るった悪漢として処罰されたのだ。その罪は重く、上級神父の地位も剥奪。牢屋の中で貧しい生活を過ごしているとのことだ。


(それにお父様が投獄されなくて良かったです)


 憲兵に逮捕されたルインだが、伯爵領の領主であることや、呪いの物的証拠がないことから投獄にまでは至らなかった。


 これはアルフレッドのおかげでもある。被害者の彼がルインの無罪を訴えたからこそ、投獄を回避できたのだ。


「エリス、君は私との結婚に同意してくれた。だが私はイベントごとにはこだわりたいタイプなんだ」


 アルフレッドは懐から指輪を取り出す。大粒のダイヤに光が反射し、七色に輝いている。この指輪が何を意味するかは、エリスにも察することができた。


「改めて伝える。私と結婚してくれ」

「喜んで♪」


 エリスの薬指に結婚指輪が通される。二度、婚約破棄された伯爵令嬢は、三度目の正直でハッピーエンドを迎えたのだった。

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