第100話 朝の異変
学園での一夜が明け、屋敷へ戻るための帰り支度をパウリーネさんやモリスさんにも手伝ってもらいながらしていたのだが、その途中で何やら外が騒がしいことに気づく。
「なんだ?」
「何かトラブルかしら」
量の外へ出た瞬間、俺もロミーナも言葉を失った。
「こ、これは……」
見上げた先にあるのは青空――ではなかった。
空はある。
問題は……その色だ。
「紫色の空なんて始めて見るわ……」
思わずロミーナが口にしたように、空は俺たちがこれまでに見たことがない紫色へと変わっていた。
学園側も想定外の事態が発生したと教職員たちが慌ただしく走り回っていた。
そのうちのひとりが学生寮へとやってきて「次の指示があるまで待機しておくように」と告げられる。
モリスさんが詳しい事情を尋ねたが、結局明確な回答は得られず、職員は次の対応のため足早に去っていった。
「まいりましたな。これでは今日中に帰るのは無理かもしれませんね」
「帰るどころか、学園から出られるかどうかさえ不透明ですね」
俺たちにそう説明するモリスさんとパウリーネさん――が、不思議と「そうなんだ」と受け入れてしまえるのは最近起きた出来事がいろいろとショッキングすぎるからかな。
しかし、まずい状況というのに変わりはない。
周りの学生たちの話を聞く限り、あれは恐らく結界魔法の類。
この学園から外へ出られなくするためのものらしいが……問題は誰がなんの目的であれを設置したかだ。
もしかして……俺やロミーナを閉じ込めておくため?
前から俺たちを狙っていたヤツが、とうとう学園にまで手を出してきたか。
「アズベル様、ロミーナ様、私とパウリーネから離れないようにしてください」
モリスさんは事態を察知し、俺たちの安全確保に動く。
これは今日中に帰れるかどうかの話じゃなくなってくるな。
「とりあえず、寮のロビーにいれば人も大勢いるし安全ね」
「いえ、この人だかりに紛れ込んで近づいてくる者も――むっ!」
パウリーネさんが何かに反応して振り返る。
そこにいたのは、
「ふたりともご無事ですか!?」
騒ぎを聞きつけてやってきたカルロだった。
彼のことを知るパウリーネさんは「申し訳ありません」と謝罪し、彼を改めて俺たちの方へと呼び寄せる。
「カルロ、何が起きたか知っているか?」
「空の色が変わって、それが結界魔法の影響によるものだとしか……」
俺たちと同じってわけか。
一体、何をしようっていうんだ?
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