第94話 講堂へ

 学園へと足を運んだ俺たちは見学希望者が揃うまで待機する専用の部屋へと案内された。

 今回はパウリーネさんとモリスさんも一緒に行動することとなった。


 例年通りならばふたりは学園に滞在しないのだが、最初に職員から「ひとりは護衛として学園に常駐できるように変更された」と教えてもらい、ふたりは晴れて堂々と学園内を歩けるようになる。


「懐かしいなぁ……」

「あの頃とまったく変わっていない」


 ここの卒業生でもあるふたりは、一瞬仕事を忘れて思い出に浸っていた。パウリーネさんとモリスさんは互いに青春時代に対して何か思うところがあるらしく、懐かしさに喜びつつも複雑そうな表情を浮かべている。


「何かあったのかな?」

「さあ……あまり触れてほしくはなさそうだけどね」


 俺とロミーナは聞こえないようにコソコソと話し合う。

 そうこうしているうちにさっきの職員が俺たちを呼びに来る。

 

「全員揃ったので今後の動きについて説明します。すぐに講堂へ移動を」

「「はい!」」


 元気よく返事をして、部屋を出る。

 その後ろからは護衛役のモリスさんとパウリーネさんが。


 警備は万全だが、いつどこで何が起こるか分からない。

 さすがにもう思い出には浸っておらず、仕事に集中してくれている。


 さて、その講堂にはすでに二十人近い来年度の新入生が集まっていた。


「学年の人数にしては少ないね」

「あくまでも今日の日程で行われる見学に参加しているのがこの数なのであって、本来はもっと大勢いますよ」

「ですよねぇ」


 丁寧に教えてくれるモリスさん。

 なんとなくだけど、以前より声も表情も柔らかくなったような気がするな。単に俺が慣れたってだけなのかもしれないけど。

 しばらくすると、舞台に眼鏡をかけた中年男性が立つ。


「静粛に。私は来年度から一年生魔法科クラスの担任で学年主任になります、スチュワートです」


 魔法科クラスの先生――ってことは、俺たちのクラスの担任ってわけか。

 

「これより希望する学科ごとに校舎を見て回りますので、よく聞いておいてください」


 いよいよ本格的に見学がスタートするみたいだな。

 魔法科は一体どんな校舎なんだろう。

 めちゃくちゃ気になるぞ!

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る