第86話【幕間】背後の存在
パルザン地方に迫っていた脅威は、敵の魔法使いを捕らえることで無事解決――と思われていたが、アズベルはまだ背後に別の存在があるとして警戒を怠ってはいなかった。
一方、ここはロミーナの実家であるペンバートン家の屋敷。
「お姉さま……由々しき事態ですわ」
「聞いているわよ。あの魔法使いが敗北したそうね」
色とりどりの花々が咲き誇る庭園で、エクリアとカテリノの姉妹は優雅に紅茶を飲みながら発生した思わぬトラブルについて話し合っていた。
「凄腕の魔法使いという触れ込みでしたのに、とんだ期待外れですわ」
「でも、彼女の実力はあなたも目の当たりにしたでしょう?」
「そ、それは……」
「間違いなく、彼女はそこらの魔法使いより格上……問題なのは、そんな実力者を送り込んでも返り討ちにしてしまうほど、ロミーナの力が覚醒しているという点」
ウィドマークの屋敷を襲撃した魔法使いは、ペンバートン家が雇った刺客だった。もちろんそれがバレないよう、何重にもわたる安全策を練っているため、彼女たちが黒幕だとたどり着くのは難しいだろう。
そんな手間をかけてまで狙ったのは、三女ロミーナであった。
ある計画を遂行するため、これ以上長生きはしてもらいたくないというのがペンバートン家の本音だ。
ウィドマーク家を婚約者に選んだのも、仮に他の家族を巻き込んだとしても大事にならない可能性が高いからである。
なぜそこまでするのか――その理由は、
「あの子にはペンバートン家の抱える負の歴史を抱えたまま沈んでもらわなくてはいけないものね」
カテリノがボソッと呟いた。
それこそがペンバートン家の真の狙い。
仮に、その負の歴史とやらが公になった際、国への影響力がもっとも低そうなのが弱小貴族であるウィドマーク家――これが、アズベルを婚約者に選んだもうひとつの理由であった。
当然、ウィドマーク家はそのような狙いを知る由もない。
当主は落ちぶれていた家を再建するチャンスだと躍起になっていたが、そのような機会は最初から存在していなかったのである。
だが、ペンバートン家の誤算はそのウィドマーク家の予想外のしぶとさにあった。
本来であれば舞踏会の夜に大型モンスターを城へ襲撃させ、それをウィドマーク家の仕業に仕立てようとしたのだが、失敗。そして今回も凄腕の魔法使いによる急襲作戦が失敗に終わってしまった。
度重なる失敗に、三姉妹の母であり今回の件の黒幕でもあるヘレナ・ペンバートンは激昂。
「次こそは!」と気合を入れて策を練っていた。
そして、その舞台は――
「お母様は……ふたりを学園に招くおつもりです」
アズベルとロミーナが通う予定となっている学園になりそうだ。
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【この男’s(メンズ)の絆が尊い! 異世界小説コンテスト】に参加するため新作を投稿しました。
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