第82話 ふたりだからできること
壮絶な戦いを繰り広げる敵の魔法使いとイルデさん。
俺とロミーナは支援をするために屋敷を飛びだした。
「っ!? ふたりともどうして!?」
イルデさんがこれまでに見たことないほど慌てている。
そりゃそうか。
この戦いは俺たちを守るためのものなのに、その守るべき俺たちが最前線にノコノコとやってきたわけだからな。
ただ、こちらもまったく勝算がないままやってきたわけではない。
ロミーナの氷魔法と俺の魔銃……特に俺の力は原作になかった未知のもの。ふたつの力が合わされば、きっと戦況を覆せるはずだ。
向こうにとっては俺たちふたりが参戦するというのは完全に想定外だったはず――が、まったく動揺した素振りを見せない。イルデさんとは違い、感情が読めないどころか存在していないのではないかと疑いたくなるほどのポーカーフェイスぶりだった。
恐らく、戦力にならないと見ているのだろう。
あれだけの策を練ってくる相手だから、こちらの力もある程度は頭に入っているはずなのだが、それでもまったく動じていない。
「ここから出ていってもらうわよ!」
先手を取ったのはロミーナだった。
魔力で氷の矢をいくつも生みだしてそれを相手の魔法使いへと放つ。
驚いたのはその速さだ。
これまでは魔力を制御するのにどうしても手間取ってしまったのだが、非常事態ということもあってか鍛錬中でも見たことがないほど素早く魔法を扱えている。やはり本番に強いタイプのようだ。
――だが、敵の魔法使いは無数の氷の矢をまるで目の前を飛ぶ羽虫を追い払うがごとく手を軽く横に振っただけですべて消滅させてしまった。魔力によってガードをしているから可能なのだろうが……なんてヤツだ。
「なら、次は俺の番だ!」
追撃とばかりに、俺は魔銃の引き金をひく。
氷魔法よりも速度があるこいつはそう簡単に弾き返せないはず――と、思っていたら、敵の魔法使いの体に当たる直前に、「バチッ!」という大きな音とともに魔力の込められた弾丸は弾き飛ばされた。
今の……まるでバリアみたいだった。
「魔力で壁を生みだし、魔銃から放たれた弾丸を無力化したようだね」
茫然とする俺を見かねて、イルデさんが解説を入れてくれた。
結局、俺とロミーナが加勢に来ても現状は好転せずってわけか……くそっ!
俺は悔しさでいっぱいだったが、イルデさんはどうも違っていたらしい。
「君たちの勇気ある行動で勝機が生まれたよ」
「「えっ?」」
まったく通じていなかった俺とロミーナの攻撃……だが、イルデさんはそこに勝つための道筋を見出したというのだ。
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