第55話 弱点
モリスさんがかつての剣術を取り戻せるように生産魔法を駆使して完成した義手の第一号。
しかし、結果としては剣を振る以前の問題が発生していた。
その問題とは――
「全力で斬ろうとすれば、この腕はバラバラになってしまうでしょう」
「バ、バラバラに!?」
「つまり耐久力がないのです」
モリスさんとパウリーネさんが口を揃えて語ったのは、義手の耐久度の低さであった。言われてみれば、俺は機能性を重視するあまり、強度はおろそかになっていたように思う。
それでもまさか一度も剣を振らずしてそれを見抜かれるなんて……たぶん、ふたりの目にはめちゃくちゃ脆く映ったのだろうな。
「なるほど……強度か」
「せっかく作っていただいたのに、申し訳ありません」
「そんな! モリスさんが謝ることなんてないですよ!」
むしろ俺としては正確にどこがダメなのか伝えてくれてありがたいと感じているくらいだった。改善点が分からないまま失敗を続けるというのが一番よくない状況だからな。
俺はふたりにお礼を言うと、ロミーナと一緒に自室へと戻った。
まだまだ素材には余裕がある。
試作品はまだまだ作れるのだ。
部屋に到着すると、すぐさま素材を広げて作業へと取りかかる。
「強度のアップか……そうなると、金属系の素材を増やしていくしかないよなぁ」
それが真っ先に思いついた対策だが、これには問題もあった。
それについてはロミーナも気づいているようだ。
「強度アップは重要なのでしょうけど……その分、重量が増して動きが鈍くなるんじゃないかしら」
「うん。俺もそれを懸念しているんだ」
頑丈にするためには、金属素材を何層にも積み重ねるのがもっともシンプルな方法だろう。しかし、それをやると今度は重さが増して動きが鈍くなる。特にモリスさんはスピードを生かして戦う騎士。増量によって俊敏さを失うのは致命的と言えた。
「軽くて強固な素材が手に入れば……って、そう都合よくもいかないか」
入手困難どころか、そもそもそのような金属がこの世界に実在しているのかさえ分からないのだ。そのような不確定要素に頼るのは避けたい。
いいアイディアが浮かばず、俺とロミーナはふたり揃って「うーん」と唸りながら頭を捻るのだが、やっぱり何も出てこない。
「もう……欲しい素材を好きな時に入手できればいいのになぁ」
半ばあきらめた様子でロミーナがそう呟く――が、それが俺にとって大きなヒントとなったのだ。
「それだよ、ロミーナ!」
「び、びっくりした……それって?」
「好きな素材を好きな時に手に入れる――どうしてこの発想が浮かんでこなかったんだ!」
「?」
ロミーナはピンと来ていないようだが、俺にはしっかりと突破口が見えた。
少し時間はかかるけど、今のところこれがベストな選択だろう。
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