第46話 異変

 商人たちから高評価を得た湖を横断する運搬方法。

 翌日も多く商人たちが湖へと詰めかけていた。


「ここまでの規模になると、これだけでひとつの商売が成り立ちますね」


 ライナンさんは目を輝かせながら集まった商人たちを眺めていた。

そういう彼もまた商人。

おまけに原作【ブレイブ・クエスト】では大陸でも屈指の商才を持つ天才とされている。まだ若手時代とはいえ、そんな彼が注目するこのビジネスはきっといい方向に進むだろう。


荷物を積み込んでいるのは手伝い出来てくれているガナス村の人たちだが、ライナンさんがよそから新しい働き手を探してくるとのこと。まあ、村の人たちは主要産業でもある農業や林業で忙しいし、村の人口も増えるのでそちらの方がいいかな。


 まもなく作業が終わり、出航まであと少しという時――


「いたたたたっ!?」


 突如誰かの叫び声が湖に響き渡った。

 何事かと声のした方向へライナンさんたちと一緒に駆け寄ると、そこではひとりの屈強な男性が別の男性を取り押さえていた。


「な、何があったんですか!?」


 慌てて声をかけると、屈強な方の男性が一枚の紙を差しだした。


「この男が持っていた物です」

「えっ? こ、これは……」

「ま、魔法文字!?」


 真っ先に反応したのはロミーナだった。


「魔法文字?」

「イルデさんから聞いたことがあります。この世界には魔力を込めた文字が存在し、その言葉に応じた魔法が使用できる、と」


 そ、そんな超便利技が……いや、待てよ。確か原作ゲームでも同じような原理のアイテムがあったな。これがその現物というわけか。

 さらに屈強な男性が追加情報をもたらしてくれた。


「ロミーナ様の言う通りです。ここに書かれている魔法文字で使用できるのは炎魔法――つまり、彼はこの船を燃やそうとしていたのです」

「ふ、船を燃やす!?」


 な、なんてことだ。

 もし気づかずに船をだしていたら……ゾッとするな。

 物騒なこの男の正体も気になるところではあるが、そんな彼を捕らえたこの男性も只者じゃないような。


「あなたは一体……」

「黙っていて申し訳ありません。私の名前はモリスと言います。実はマドリガル騎士団長からの指示で監視役をしておりました」

「えっ!?」


 ということは、この人は騎士なのか!?

 でも、どうしてここを監視していたんだ……?


 まあ、実際こうして怪しい動きをしている者を捕まえたのだから、きっと予兆のようなものがあって部下を向かわせたのだろうか。

 とりあえず、捕らえた男から事情を聞きだすとするか。

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