第19話 初顔合わせ

 ついにやってきた、舞踏会当日。

 今回はただのパーティーというわけではなく、オルメドとファルザン両国の友好をより深めるための交流会的な意味合いも込められていた。


 本来であれば、こういった大舞台にウィドマーク家のような辺境領主のド田舎貴族にお呼びがかかることなどない――が、今のうちにはロミーナがいる。王家とのつながりも深い公爵家令嬢を呼ばないというのはファルザン王国に対して失礼に値すると判断したのだろう。


 父上も母上も、ロミーナがうちへ来た時は王家とのつながりができると大はしゃぎであったが、いざこの手の舞台にお呼びがかかると急に及び腰となってしまった。

 とはいえ、このまま何もしないというわけにもいかないので、ふたりは覚悟を決めて今日という日を迎える。幸い、パウリーネさん経由でペンバートン家からもフォローが入るらしいので、最悪の事態は回避できそうかな。


 俺としても、当日に赤っ恥をかかないようダンス特訓を頑張ってきた。

 本番は緊張するけど、ロミーナのためにもミスせずに乗り越えたいところ。

 

 あと、念のため魔銃を持っていくことにした。

 この世界にはこういった形状の武器がないため、怪しまれずに持ち込める。

 

 それと、普通は貴族が武器なんて持ち込まないからスルーされるだろうとパウリーネさんが教えてくれたというのもあるかな。大体、武器は護衛の騎士たちが携帯しているし、そもそも自ら戦うってこと自体が稀らしいから。


 俺が警戒する理由は、やはりあのエンペラー・スパイダーの一件があったから。

 どうにもキナ臭いんだよなぁ。

 俺は誰かが仕組んだものじゃないかと睨んでいて、イルデさんも同じ考えだった。

しかし、彼女が独自に調査したところ、不自然な点は見られなかったという。魔女と呼ばれるほどの魔法使いであるイルデさんの目を欺くとなると相当な実力者が絡んでいなければ不可能だろうし、それをするメリットも思い浮かばない。


 やはりあれは偶発的に発生した事故だと結論付けた。

 ……でも、それでも俺はなんだか嫌な予感がして、魔銃を忍ばせる。今回は前回の物よりひと回りサイズが小さく、拳銃くらいの大きさだ。威力は落ちる分、持ち運びが便利になっている。


 使う弾丸は炎と水。 

 ……何もなければいいのだが。


  ◇◇◇


 移動中の馬車の中でロミーナと楽しく談笑をしていると、あっという間に王都へと到着。

 舞踏会が開催される日とあって、ロミーナ曰く王都内はいつもより賑わっているように感じるとのこと。


 最奥部にある城へと入り、使用人たちが荷物などをおろしている間、俺たち家族は先に城内へと足を踏み入れる。

 すると、早速両親が別の貴族に声をかけられた。

 たぶんロミーナのことについて聞かれるのだろうなと察し、俺とパウリーネさんは許可をもらってから彼女を連れて中庭へと移動。


 ――だが、この選択は誤りだった。


「あら、ロミーナじゃない」

「久しぶりですわね!」

「っ! エクリアお姉さまにカテリノお姉さま……」


 待っていたのはロミーナと折り合いが悪いというペンパートン家の長女と次女であった。


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