第11話 青年商人ライナン
いずれ大陸を代表する商人となるライナン・オルダーソン。
だが、現段階では商人という仕事をしつつも悩みを抱えているようだった。
それは――「一体どんな商売をすればいいのか分からない」という割と根本的なものであった。売る物が分からないって……それは商人という仕事上もはや致命的とも言える悩みだと思うんだよな。
ただ、本人は真面目に悩んでいるようだ。
「なんとか力になってあげられないかしら……」
心配そうに見つめるロミーナ。
原作では彼が主人公たちに与えたアイテムによって俺たちは窮地に立たされてしまうわけだが、今はそれを抜きに考えよう。あの展開はあくまでもロミーナが氷結女帝へと闇堕ちしてしまったという最悪の結果が引き起きした悲劇なのだ。
俺がしっかりして、彼女を幸せにすれば問題ない。
その実現のために、ライナンさんの協力を得るというのは重要なアクションだと思う。
ただ、父上が危惧していたように、俺の生産魔法は使い方によってとんでもない兵器を生みだしてしまうことが発覚した。魔銃については今後のことも考え、護身用という名目で近くに置いておきたいが、それ以外についてはしばらく伏せておこう。
――で、問題はライナンさんのお悩み解決。
商人としてどんな道へ進みたいか迷っている彼に俺は何ができるだろう。
やれることといったら、原作知識でよい方向に導くくらいだが……そうだよ。原作だ。原作で彼はどんな商人をしていたのかそれとなく教えれば、何かを閃くかもしれない。
原作のライナンさんは……なんでも売っていたな。
ある意味、それが強みだった。
商人というのは自身の得意な入手ルートというものがある。武器を手に入れるルートがしっかりしている者もいれば、食料もある。「俺はこの分野が得意だぜ!」という強みがあれば重宝されるのだが、彼の場合は何でもこなせた。
それが商人としてのライナン・オルダーソンの強みでもあったのだ。
そう。
何でもあるんだ。
困った時はとりあえずライナンさんの店に行けば大抵のアイテムや武器は調達できる。それはきっと、【ブレイブ・クエスト】のプレイヤーならば誰もが一度は思ったことだろう。
「……ライナンさん」
「うん?」
「これは素人考えなんですけど、特に決めなくてもいいんじゃないですか?」
「えっ?」
「アイテムとか武器とか、とにかく何でもいいから」
「何でも……」
俺の拙い説明でも、ライナンさんは何かを感じ取ってくれたようだ。
その後、彼はしばらく近くのガナス村で暮らすこととなった。
これからの動きについて大きなヒントを得たらしいが、それを実現するまでには少し考えをまとめたいという。
これに対し、父上はすぐさま了承した。
俺が念を押したっていうのもあるんだけど、どうやら話をして人間的にもライナンさんを気に入ったようだ。
……本題はここからだ。
彼に俺のアイテムを託して大丈夫なのかどうか、しっかり見極めないとな。
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