第40話
今日も日中はダンジョンに潜って特訓を行う。
何日か経ち、少しずつ慣れてきていた。
「明日は24日か、彩香に任せてたけど、どこに連れて行かれるのか」
素振りを終えて帰りながら、そんなことを呟いた。
今日はようやく1日の素振り成功回数が10回に到達し、少し気分が良い。
モンスターは倒していないので帰還報告をささっと受付で行い、彩香の待つ家に帰る。
「ただいま、彩香」
「おかえりなさい、健太さん。今日は良いタイミングですね、ちょうど夜ご飯ができたところですよ」
「おお、それは嬉しい」
エプロンを付けた可愛らしい彩香が出迎えてくれた。
ちょうど出来上がったらしい夜ご飯の匂いが漂ってくる。
一緒にご飯を食べて、のんびりした時間を共に過ごす。
「少しお腹が膨らんでるね。5ヶ月だとこんなもんなの?」
「そうですね、調べたら胎動が始まったりするのも5ヶ月くらいかららしいです」
「すごいなぁ、彩香のお腹の中で一つの命が育ってるんだね」
優しくお腹を撫でながら、彩香の体に魔力を走らせ健康状態を確認する。
「んん?」
「どうしました?」
「赤ちゃんだけどさ、そこそこの魔力を持ってるっぽい。母子共に健康体だけど、少し気をつけた方が良いかも」
「大丈夫なんですか?赤ちゃんになにかあったら...」
「俺が見てれば大丈夫だよ。毎日朝晩と観察して、調整してあげれば問題なし。むしろかなりの素質を持った強い子が産まれるかもね」
「そうですか...でもこの子は女の子ですよ?あんまり健太さんみたいにはなってほしくないです」
「まあ何年も先の話だし、今は元気な子が産まれてくるようにするだけだよ」
お腹の中の子の魔力を調整し、彩香に影響が出ないようにする。
子供の方は魔力に対する親和性が高いので、少し魔力の流れを整えておけば大丈夫そうだ。
少し驚いたが、彩香も子供も健康なのはわかったので一安心。
「明日はどう動く予定なの?」
「夜ご飯はお店を予約してありますけど、日中は特に決めていませんよ」
「まあ、適当に買い物でも行こうか。妊婦用の服とかだって買わないとだしな」
「健太さんて、なかなかの愛妻家ですよね」
「ただ彩香と子供を大切に思ってるだけなんだけどな」
他人はどうでも良いと思っていたが、彩香を愛することで変わったというのは自覚している。
それでも気にするのは彩香と子供くらいで、両親に対しても感謝はしているが彩香ほど大事だと思っていない。
そもそもダンジョンに魅入られた俺がまともな人間な訳がなかった。
「まあ、のんびりデートでもして楽しもうか。体つらかったりしたら無理しちゃだめだよ?」
「はい、無理はしませんよ。楽しみです」
楽しそうに、幸せそうに微笑む彩香の顔は、とても綺麗だった。
×××
「体冷やさないように、暖かい格好をするんだよ?」
「わかってますよ。健太さんは、この季節にしては随分と薄着じゃないですか?ロンTに上着を羽織るだけって」
「俺はほら、魔力があるからね、下手に着込んでも動きづらいだけだし」
「やっぱりそれずるいです、羨ましいです」
「探索者の特権だね。一緒にいる時は彩香もまとめて魔力で覆ってるから、いくらかマシじゃない?」
冷たい風なんかは防いでいるのでそれなりに楽なはず。
「よし、行こうか」
「デートは久々ですね。楽しみです」
2人で家を出て、駅へ向かった。
彩香に合わせて、ゆっくり歩く。
束の間の日常、ダンジョン内では味わえないゆったりした空気を楽しもう。
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