第8話
3年に進級した。
神田とは妙な縁があるのか同じクラス。
何人かは見覚えがあるから同じクラスだった人もいるんだろう。
担任は進路についてしっかり考えるようにとの話を最初にしていた。
その後は最高学年らしい行いをするようにとか、今後に悩んだら相談してくれればしっかり対応するとか、担任らしいことを言っていた。
「なあ山村よ、お前は卒業後はやっぱ探索者か?」
始業式後のホームルームも終わり、あとは帰るだけとなったところで神田がやってきて、そう聞いてきた。
「そうだな、専業探索者だな。そう言う神田は?」
「俺は進学かな。親にも大学は出とけって言われてるし」
そんな会話をしていると近くの席に座る女生徒が会話に混じってきた。
「あんた、山村、だっけ?探索者やってるの?」
「ん、おお、やってるぞ」
急に話しかけられてびっくりしたが質問には答える。
「こいつむっちゃ強いぞ、引くくらい」
「へー、ランクはいくつなの?Dとか?」
にやにやしながら言う神田と、その発言に反応してランクを問う女生徒。
「去年ランク関連でごたごたしたからあんまり大っぴらに言いたくないんだよ...」
羽賀のことを思い出してうんざりした顔をしてしまう。
結局は受付嬢から上の方まで話が行って羽賀家は親子共々がっつり注意されたらしいが、興味無かったから詳しくは聞いていない。
「Dどころじゃないぞ、普通にこの学校どころか高校生の中では1番強いんじゃないか?」
神田が勝手に答えていく。
「えー、盛り過ぎじゃない?そだ、今度ダンジョン配信とかやってみてよ!」
「ダンジョン配信?なんだそれ」
「え、知らないの!?ほら、こういうやつ!」
そう言って女生徒はスマホを操作すると、画面をこっちに見せてきた。
「これは切り抜きっていう、配信中の見どころなんかを纏めたやつだけどね!こうやってダンジョン探索の様子を撮影してるの!」
動画ではホブゴブリンを相手にする5人組のチームが映っている。
5分ほどかけて白熱した闘いをした後、カメラに向かって感想や注意点を話してその動画は終わった。
「この人達って、その配信?してる人達の中ではどれくらい強いの?」
「んー、どうだろ、ホブゴブリンって初心者の壁?なんでしょ?ならそれなりに強いんじゃないかな?人気はけっこう高いよ!登録者数だって50万人くらいいってるし!」
「んー、俺にはあんまり合わなそうだな。まあ気が向いたらってことで」
あの程度の強さでそんなに人気になっちゃうのかと思わなくも無かったが、わざわざ自分の強さを宣伝する必要も無いしなぁと配信からの興味を無くす。
「じゃ、俺は帰るわ、平日に昼から潜れるなんて滅多に無いし」
そう言って2人に挨拶をして帰って行く。
×××
「実際山村ってどんくらい強いの?」
山村が帰った後、残された神田に女生徒が聞く。
「さっきのホブゴブリン?なら瞬殺できる程度に、かな?普段かなり深いとこまで潜ってるのみたいだからね」
「まじかぁ、配信も興味無さそうだったしなぁ」
そんな会話をして2人も解散し、それぞれ帰って行く。
「配信かぁ、うまいこと言えば探索風景垂れ流しならさせられるか?」
帰りながら山村について考え口に出す神田。
「人気とかには興味が無いのは確実、なんなら目立ちたく無いって思ってるしな。自分の戦闘風景を撮っておいて後で見返す為みたいな言い訳を使えば...いけるか...?
いや、でもそれで去年みたいなことになったら俺が山村にすごい怒られそうだ。あいつの威圧怖いからな...」
×××
神田がそんな事を考えているとは露知らず、ダンジョンに潜る山村。
魔力を0に近くなるまで不活性化させ、素の身体能力で探索という訓練に最近はハマっていた。
魔力を込めれば込めるほど強くなるのは確かだが、それだけだと魔力が無くなったらどうするのかと、そんなことを考えた時に思い付いた訓練で、まだこの状態だとドラゴンなんかを相手にしたらやられてしまう。
だからこそ面白いと、山村は一層からゆっくりと慣らしていき、今は50階層付近で戦闘訓練をしている。
今も意図的にモンスターハウスとなっている場所に突撃し、殴り殴られの大混戦を素の身体能力でやっているのだから頭がおかしい。
モンスターハウス内はグリフォンやオルトロスといった獣系のモンスター、オーガやトロールといった人型系のモンスター、ゴーレムなんかの無機物系モンスターまで様々な種類のモンスターがいる。
それらのモンスターが山村に向かい、隙を探し、突撃し、山村を殺そうとするのに対して山村は笑い、叫びながら拳を振るい脚を振るい、殴られたら殴り返し、蹴られたら蹴り返し、噛まれたら肘をお見舞いし、とにかくしっちゃかめっちゃかの大乱闘を行っていた。
全身に傷を負いながらも全てのモンスターを殺し終えた頃にはだいぶ時間が経っていた。
全身の魔力を活性化させ傷を治すと、気持ち急ぎめで外を目指す。
走りながらの魔力の活性不活性を素早く切り替える訓練をしていると、すぐに外まで着いてしまった。
受付嬢に帰還の報告をし、山村は今日も楽しかったと言わんばかりの満足そうな顔で帰って行った。
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