第7話

 それから暫くは平和な日が続いた。


 平日は学校へ行き放課後はダンジョンへ。

 週末は泊まりがけでダンジョンへ。


 魔力の操作、制御にも慣れ身体能力もさらに上がり、100階層のドラゴンもさくっと倒せるようになった。


 そういえばミミックを倒した時にドロップしたアイテムが指輪の方はアイテムボックスで、水晶の方はスキル進化の水晶だと言うのがわかり、是非売ってくれとすごい金額を提示されたが断って自分の物にした。


 今まではダンジョン産の空間拡張バッグを使っていたが指輪一つで済むのですごく楽。

 クソみたいなスキルも進化させたら『真贋の目』とかいう、嘘要素が嘘を見破る方に行っちゃった鑑定の完全上位互換に進化したおかげで、ダンジョン内外ですごく役立つようになった。


 ダンジョンでのドロップ品の一つ一つの価値をスキルを使って把握して、とりあえずアイテムボックスにしまっておいて、みたいな感じでアイテムボックスの中に魔石や素材がどんどん溜まっていった。

 全部売っても良いけど、調子に乗って集めすぎたせいで多分めんどくさいことになるから、査定に出すのは適度な量にして残りはしまったままにしておいてる。



 ×××



 もうすぐ3年生になる2月、山村は今日もダンジョンに潜っている。

 スキルのおかげで短所は克服し、長所は伸ばし、鍛え抜かれた山村は放課後の2、3時間だけで100階層に行って帰って来れるようになっていた。

 春休みには1週間くらいダンジョンに潜って、行けるとこまで行く計画もこっそり立てている。



「もうすぐ3年かぁ...卒業後はどうすっかなぁ...」



 モンスターを殴殺しながらとは思えない、しんみりした雰囲気で独り言を呟く山村。


 山村ほどの強さがあれば専業で月に数千万から数億の金を稼げるが、山村はそこまで金に執着していない。

 ダンジョンに潜って探索し、モンスターとの心踊る闘いができれば基本的には満足してしまう。

 だからこそランクにも興味を示さないし、指名依頼や勧誘にも消極的だ。



「両親も最近は諦めたのか、毎月家にいれる金額の多さに誘惑されたのか、俺のダンジョン探索を応援してくれてるしな」



 その場にいたモンスターの群れを殴殺し終え、山村はうじうじ悩むのを止めた。



「よし!このまま探索者になろう!!」



 そう決めるとスッキリした雰囲気で帰路に着く。



 ×××



「俺、決めましたよ!卒業後は専業探索者になって今まで以上にダンジョンに潜ります!」



 ダンジョンから出てきた山村は、受付に帰還の報告をするついでにそんな事を伝えた。

 山村は頭のネジが飛んでいるのであれだが、まともな探索者は毎日潜ったりしない。

 探索の稼ぎ次第ではあるが、ダンジョンから出た後数日は休養をとったりする。

 受付嬢も山村のそんな決意表明を聞き、ちょっと引いていた。



「山村さんの強さと稼ぎでしたら、たしかに専業でも余裕でやっていけますもんね。でも無謀な事はやめてくださいね」



 受付嬢は山村が毎日のようにドラゴンの素材やなかなかお目にかかれないレアな素材を持って帰ってくるのを見ている。

 その為専業探索者になったらどうなるかなど簡単に想像できていた。



「まあまだあと1年あるので、それまでは今までと同じような感じになると思いますけどね。あ、でも連休とかになったら1週間ダンジョンで過ごすとかやりたいんですよね」



 山村のそんな発言を聞いて、受付嬢は頭を抱えそうになった。



「山村さん、単独でそんなにダンジョンの中で過ごそうとする人なんて基本的にいませんよ。ダンジョン内は危険なんですよ?疲労から集中力だって落ちますし、寝てる時に襲われたらどうするんですか?」



「ちゃんと休憩はしますよ。それに階層主の部屋なら一度倒してしまえば部屋を出るまでは復活もしない安全地帯になるので、ぐっすり眠れます!」



 なんで安全地帯とは言え危険なダンジョン内でぐっすり眠れるんだ等と突っ込みたくなったが、そういえば昔からちょっとアレなとこあったなと思い直しスルーする事にした受付嬢。


 ダンジョンをスリリングな楽しいテーマパークだと思う山村と、リターンは大きいが命すら失う可能性のある危険な場所だと思う受付嬢、価値観の擦り合わせは難しいのかもしれない。

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