第3話 「おもしれー女」作戦
「おもしれー女」作戦とは、ヒロインがヒロインであるが故に、攻略対象からの好感度を勝ち取ることができるスキルを使った作戦である。(私調べ)
例えば、本当は優しい心の持ち主なんだけど言葉遣いがぶっきらぼうであるが故に、周囲から遠巻きにされている男子がいたとする。
ヒロインが、そんな彼にも臆せずに話しかけて「そんな言葉遣いじゃ誤解されるわよ。本当のあなたはもっと優しい良い人じゃない」なんて核心をつくようなことを言ってその場を立ち去った場合。
「知った風な口をききやがって…ふん……おもしれー女」となる、はず。(私調べ)
例えば、女たらしな超絶イケメンの遊び人の男子が居たとして、「お前も俺と一緒に遊ばねーか。可愛がってやるぜ」なんてアプローチをされたとする。
そんな時に「遊ばないわ。全ての女を自由にできるだなんて思わないことね」だなんて冷たくあしらったりすると、「俺に
これらは全て私がこれまでプレイしてきたゲームのシチュエーションを誇張したものだ。
なんせ16年以上前の記憶なんでね。
記憶も少し誇張されて覚えているってもんよ。
スキルというか、ヒロインがただ本人らしさを見失わずに相手を見て、選択肢を選んでいけばそうなる…と、私は思っている。
選択肢、出ないけど。
ステータスは出るのに。
その為、真姫には昔から「真姫はそのままで、自分らしさを見失わないでね。そのままのあなたが一番だよ」と伝えまくっていた。
自己肯定感を上げときゃなんとかなるでしょ、と思って。
こちとら人材育成のプロでもなんでもないので、できることといえばあくまで友達としてのアプローチだ。
真姫が何かに悩んだり、壁に直面していそうな時も、いつだって傍に居た。
そして「そのままの真姫でいいんだよ。私がずっと傍にいるから(サポート役として)」と伝え続けた。
そのお陰か、結構自分なりの価値観を持ったしっかりした娘にはなったと思う。
ヒロインがしっかり者がいいかおっちょこちょいな天然娘がいいかどうかは見解が分かれるところだと思うけど。
こういうゲームは相手に「ぷっ、おもしれー女」って思わせたら勝ちだ。
きっと。
知らんけど。
今の真姫は、ゲームを進めるにあたって有利な条件が揃っている、ハズだ。
全ては希望的観測の上に成り立っている。
だってここ、あくまで現実世界なんだもの。
「皆、入学おめでとう!さて、それでは自己紹介からいこうか」
着席して待っていた教室に入って来た担任の先生は、開口一番、私達にそう告げた。
よしよしよし!
これで超絶可愛い真姫の存在が皆の目に留まる。
攻略対象もきっと気づくはず!
ひとりひとりの自己紹介が始まるなか、私は自分の番ではなく、真姫が立ち上がるその瞬間を待ちわびていた。
「一ノ瀬真姫です。趣味はお菓子作りです。子どもの頃から柔道を習っています。楽しい学校生活にしたいと思います。皆さん宜しくお願いします!」
うーん、シンプル。
しかも柔道を習っていますって…そういうギャップを期待していたわけじゃないけど、まあいいか。
私は面白いと思う。うん。
実際、真姫、何故か超強いし。
真姫がちらりと振り返り、教室の後方の座席に座る私に目配せをする。
うん、可愛い。ちょっとにこっと笑った顔が可愛い。
私に笑いかける過程で、途中の席に座る生徒達が男女問わず色めき立つのが分かった。
ここで私はもうひとつの大事なことに気がついていた。
真姫が自己紹介をした時に、ぴくりと動いたその男子生徒の後ろ姿を。
真姫が自己紹介をした少し後、その男子は立ち上がった。
「
キターー!
渡せなかったどんぐりとお花の想い出。
どんぐりと松ぼっくりとダンゴムシが大好きだった攻略対象その1、加賀美伸の登場だった。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます