第5話 思っていたのとちょっと違うかもしれない


 かくして、私達ふたりは後日、いつも遊んでいる公園からはちょっとだけ遠い、丘の向こうの大公園に来ていた。

 私も、正直、お父さんやお母さん意外と来るのは初めてだ。

 ちょっとだけどきどきしている。


「ね、ね、まつりちゃん。あれ、あれやりたい!」

 ひめちゃんの指さす先には、大きなアスレチックがある。

 一目見ただけで子ども心をくすぐられる…けど、今日の目的は違うところにある。

 がまんがまん。


「駄目だよ。今日はふたりで、しんくんへのプレゼントを探しに来たんだから。ひめちゃん、明日しんくんに遊ぼう、って言われてるんでしょ?」

 明日、ひめちゃんが加賀美君から呼び出されていることは本人から聞いている。


 そして多分、明日がその指輪を渡される『約束の日』になる。

 だから何としても今日でひめちゃんに、心のこもったプレゼントを用意させないと。


「うー…この間から思ってたんだけど、まつりちゃんって、しんくんのこと気にしすぎだと思うの。うわきしたらゆるさないから」

 何だか最後は6歳と思えぬ発言だったけど。

「違うよ。私はしんくんにこの町に住んで良かったなって思う想い出を作りたいだけだよ。だって私、ここが好きだもん!」

 何となくぼやっとした理由で濁しておく。


 少し納得のいかない顔のひめちゃんだけど、「それに、私もひめちゃんが見たっていう可愛いお花、見たいなぁ。私をそこに連れてってくれる?」とお願いすると、途端に顔色がぱぁっと明るくなった。


「まかせて!ママにきいてきたのはこっち!子どもたちだけで行っちゃダメだよ、っていわれたけど、まつりちゃんとならきっとだいじょうぶ!」

 良かった、機嫌が直って。

 少し気になることをいまサラッと言われた気がするけど。


 あとはさくっとプレゼントを拾ってラッピングしてお手紙とかつけて、じゅんびを――とそこまで考えて、私は固まった。


 ――ひめちゃんが指さしたのは、アスレチックエリアから離れて少し奥、ガッツリ森に入る、ちょっとしたハイキングコースだったからだ。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る