第4話 文化祭マジックは幻想なのか
夏休みは明け、季節は秋。そして秋といえば文化祭(諸説あり)。全国の高校生が最も楽しみにしていると言っても過言ではない行事である。無論、俺もその一人である。
「多数決の結果により、このクラスの出し物はお化け屋敷となりましたー」
文化祭実行委員会の声が教室に響き渡る。ちなみに他クラスは、ゾンビを撃つサバゲーやホラー風味の脱出ゲームするらしい。この学校、客を怖がらせる出し物ばっかりだな。
「誰とシフトを組みたいか個チャで俺にLINEしてくださーい。調整の都合上、二、三人以上は名前打ってね。そっから調整するんで」
俺は友人数人の名前を打ち込む。そして悩みに悩んだ結果、レンの名前も打ち込んで送信した。
「みんなありがとうございます。じゃあ、後はチャットGPTに頼むね」
あ、そういう感じね。神頼みでもしてレンと同じシフトになることを願おう。
「シフト分け完了したからクラスLINEにシフト表送りました。各自で確認しといてくださーい」
言われるがままにシフト表を開く。俺の名前の横には、レンの名前はなかった。ならばレンとシフトが同じなのは誰か。そう思いレンの名前の横を見ると、知らない名前があった。名前から、恐らく男子。
いやなんで知らない名前。さすがに俺もこのクラスで過ごして長いし、名前くらい把握している。逆に考えてみて把握してない人間ということは、まだたいして過ごしていない人間。すなわち転校生くんである。
おのれ転校生。またしても俺の前にたちはだかるのか。
「今日の放課後暇な人、さっそく文化祭準備を手伝ってくれたら嬉しいです」
そして俺は究極な暇人。帰宅研究会とかいう活動不明団体の幽霊部員だ。もちろん迷いなく準備に参加した。
「午前十時となりました。各クラスは出し物を開始してください」
校内放送のもと、文化祭が始まった。校内は他校の生徒、保護者、近隣の住人などもいるためいつも以上にごった返していた。
そして俺はというと。
「「「視聴覚室でお化け屋敷やってます。ぜひ来てくださーい」」」
お化けコスをして校内を巡回していた。俺のクラスは広告にも気合いを入れるようで、お化けの集団が馬鹿デカイ看板を掲げながら練り歩いている。
正直に言うと、周りの視線が痛い。カメラのシャッター音が聞こえ、思わず事務所を通してくださーいと言いたくなる。
写真を撮っているのが一般生徒だったらキレていたが、相手はカメラマンさん。学校が依頼している相手だ。後日販売されるであろう写真を想像して少しゾッとした。
そんな羞恥に襲われるシフトも終わり、クラスが拠点にしている視聴覚室に戻る。そこには受付をしているレンと転校生くんがいた。共同作業によって仲は深まっているようだ。しかも、転校生くんからレンに対する視線に熱がある。
いや、きっとこれは文化祭マジック。ただの幻想。しばらくすればこの熱も冷める。そう信じて俺は視聴覚室から離れた。
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