第2話

 A小隊からM小隊までの機動隊員は再びEISの巣の出入口へと赴いた。

 N小隊からZ小隊までが先に巣に潜入し、中に居るEISと攻防を繰り広げている。だが現在、N小隊からZ小隊まで全ての連絡が途絶えてしまっていた。おそらく全滅してしまったのだろう。


 そのため、急遽A小隊からM小隊までが招集され、追撃を行うこととなった。

 小隊の目的は一つ。巣の中心部に起爆剤を設置すること。生き残った隊員全員が巣から出たところで起爆剤を爆破し、敵の巣を崩壊させるという流れだ。


『諸君、今から入るのは敵の住む魔の地だ。奴らの住処で戦うが故に敵優勢になるのは仕方がない。できる限り、小隊同士の距離は離さず、まとまって行動するよう。健闘を祈る』


「了解っ!」


 司令官の言葉に誠を含む機動隊員全員が答える。

 各々がMADを装着し、銃、刀を握りしめる。前の小隊軍の情報から巣内は真っ暗なようだ。そのため専用のゴーグルをつけて対策を行う。


 A小隊を先頭とし、巣の中へゆっくりと入っていく。情報通り暗闇が続いていた。専用のゴーグルにより誠の視界には暗い部分は青色に光って見える。今見える景色は全体が青に包まれた世界だった。


 前の小隊軍が撃破したのか、移動中にEISに会うことはなく、一本道は広い空間へと出た。そこには複数の穴が掘られていた。総数は12個。中心部に一番近い真ん中の穴にA小隊とM小隊の二つの小隊軍が入り、残りは各々の小隊が入っていく。


 誠は前に進みながらも小隊軍の通信が切れた位置をマップで見ていた。

 通信の切れたバツ印の位置に自分たちのマル印が迫っていく。もうすぐその場所にたどり着く。


「後ろからEISが来ました!」


 不意に後ろから小隊員の切迫した声が聞こえてきた。見ると、ひとつ目の半人半馬のEISがこちらへとやってきていた。その速さは誠たちの2倍近くあり、ものすごい勢いで迫ってくる。


「全員、MADの機動力を上げろ!」


 誠は自身のMADの機動力を上げていく。足が宙に浮くと先ほどよりも大幅に早いスピードで道を渡っていく。後ろを見ると皆もしっかり付いてきていた。それを確認し、再び前を向く。


 そこで誠は目の前の光景に戦慄した。


「全員、そのままMADの機動力を最大限まで引き上げろ!」


 命令した後、目の前にある出口に向けて徐々にスピードを上げていく。勢いに任せて出口に出ると再び広い空間へと飛び出た。球体の形をした広い空間。MADの機動力をフルスロットルにさせたことで空間内を飛んでいく。


 誠はその場所に出た瞬間、身の毛もよだつ光景に体を震え上がらせた。

 球体下部の全体が忙しなく動いている。それらが全て半身半馬のEISだと分かるのに少し時間がかかった。


 そして、目の前には空を飛ぶひとつ目の半人半鳥の怪物が数多く空を舞っていた。彼らはこちらの存在に気がつくと、まるで獲物を発見したかのように体の向きを変え、勢い任せに飛んできた。


「全員、攻撃用意!」


 誠は持っていた二本の刀を構える。CADを腕に目一杯注入し、戦意を向上させ、筋力を強化させる。MADの軌道に則って、半人半鳥の怪物を次々と斬りつけていく。

 N小隊からZ小隊はおそらく、ここで全滅してしまったに違いない。半人半鳥の怪物にやられたのか、それとも下にいる半人半馬の怪物にやられたのか。はたまた別のやつか。


「千賀、下の敵に電子光線を!」


 半人半鳥の怪物と戦っている最中、誠は同じ小隊である千賀 紀次(せんが のりつぐ)に指示を出す。彼は両手サイズの大きな銃を操る遠距離戦隊員だ。

 紀次は誠の命令を聞き、銃口を下へとかざす。無数の半人半馬の怪物が混沌としている中央に照準を定めた。


 刹那、不意に半人半馬の怪物の内部に光が灯る。紀次が「何だ?」と思った時には、光は紀次の目の前に来ており、彼の体を包み込んだ。

 誠は光に飲み込まれる紀次の姿を見ていた。半人半馬の怪物が群がるところから現れたのはレーザー光線だった。紀次はその餌食にあったのだ。


「千賀!」と叫ぼうとした声は喉につっかえ、口から出なかった。それは誠の体が咄嗟に動いたからだろう。千賀はレーザー光線に焼き払われる前に持っていた銃を外へと投げ込んだ。それは間一髪、レーザー光線の射程内を離れ、破壊されずに済んだ。


 半人半馬の怪物がレーザー光線を出した記憶はない。おそらく、彼らがうじゃうじゃしているところに紛れてレーザー光線を放つ怪物がいるに違いない。奴らを殲滅することがまずは優先される。


「全員、今の相手に集中せよ!」


 誠はレーザー光線に気を取られた隊員たちを鼓舞するように叫ぶと、落ちていく銃をMADの飛行技術を使って追いかけていく。途中、下から無数のレーザー光線が飛んでくるが、それをうまく交わしていく。レーザー光線は全て誠めがけて飛んでいた。彼らはこれから起こることが理解できるみたいだった。


 だが、誠の飛行技術は無数のレーザー光線をもろともしない。

 あっという間に銃のところまで辿り着くと刀をしまい、銃を取った。千賀が準備したエネルギーがまだ蓄積されている。


 誠は取るや否や銃口を下に向け、半人半馬の怪物が混沌と渦巻いている空間に向けて引き金を引いた。電気の弾が銃口から発射されるとそれが中央に入り込む。そこから徐々に範囲を広げ、半人半馬の怪物全てを包み込んでいった。

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