第52話 復旧作業

ロード達が順調に準備を進めている間、Dr.Jは焦っていた。


「まだ電力は戻らないのか!」


苛立ちをあらわにし、電池式の小型の無線機に怒鳴る。


「うるさいなぁ、少し黙って?」


静かながらも、とげのある口調で返事するノア。

スクラップ場の地下深く。マグマの熱エネルギーを利用し、電気を作り出す発電所から

黒く巨大な機関車のような発電機からモクモクと煙が上がっている。

朔桜が楽園プレイルームを漏電させた事でブレーカーが落ちた。

そして、その弾みで機械が壊れDrが作った縦長のドラム缶のような

無機質な整備ロボが直している最中だ。


「漏電箇所。楽園。集電帯。通電停止。修復率95%。残り時間3分です」


「だってさ?」


無線をロボの方に向け、音声をDr.に聞かせる。


「楽園からの漏電だと……。復旧後すぐに吸電し、逃げ出した魔人をすぐに捕まえろ。被害が甚大だ」


「あの魔人、逃げちゃったんだ。まあ、いいよ?」


軽い返事をしたノアからは余裕が見て取れた。

再びロードを相手する事に何の不安も懸念も無い様子。

それほどに自分の力に自信がある証だ。


「一番の心配は子供たちだ。私は楽園の扉が開き次第、すぐに潜水艦に一時避難させる!」


Dr.はノアの返事を待たず、一方的に告げて無線を切ってしまった。


「まったく。せっかちだなぁ?」


そして3分後、復旧作業が終わり竜宮城に電気が戻る。


「じゃあ、任せたよ? ノア?」


「分かったよノア?」


ノアは二人に分身し、片方は電力源に背を付け腰を下ろし、もう片方は出口に向かって歩き出す。


「さあ、魔人さん。遊っびましょ~?」


布をはためかせ、深い蒼眼が暗闇でギラリと光るのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る