第43話 電磁投射砲
朔桜をスクラップ場まで下がらせてから十分ほど経ったが、朔桜はまだ戻らない。
階段は往復でもせいぜい三分くらいだろう。時間がかかり過ぎている。
下でなにかあったのだろうか。
その間、俺はこのカニの攻撃をずっと避け続けている。
攻撃は単調で避けるのはさほど難しくはない。
魔術で防ぐ事も、動きを止める事もできないのは、多少厄介ではあるが。
まあ、こいつを倒す方法はいくらでもある。
一番片づけるのに楽なのは《八雷神》だが、この場所では呼べない。
八雷神は基本的に雷として空から現れるため、洞窟の中や海底では呼ぶ事ができない。
まあ、一部例外もいるんだが。
とにかく、こいつを倒すには同等の硬さの金属が必要だ。
この先、同じような敵が現れる可能性を考えると、できるだけ魔力は節約しておきたい。
そんな最中、後方からなにか音が聞こえてくる。人の足音ではない。機械音だ。
現れたのは、エビみたいなロボットが二機。
「あいつ……残骸を拾ってこいと言ったのに……」
新品のロボはお呼びではないのだが、まあこの際どちらでもいい。
結局、残骸になるのだから。
「爆雷―
両手から鬼灯のような電撃の塊を放ち、二機の正面部に当たると同時に爆散した。
クラブと違い、普通の機械は対魔術性能はないようだ。
ロボット原型を留めないほどバラバラに吹き飛び、辺りに散らばる。
その残骸から指先ほどの大きさの破片をいくつか拾い上げた。
「
右手に雷で作った拳銃を作りだす。
「人間界の漫画ってので見たんだよ。拳銃ってやつ。一度使ってみたかったんだ」
鉄の破片を親指で弾き、中に詰める。
「じゃあいくぜ」
「いひひ、そんな豆鉄砲じゃクラブの装甲は傷一つも―――」
男の言葉を
それはクラブの頭上を掠めて、奥の壁に当たる。
分厚い壁には、豆粒ほどの穴が奥深くまで開いていた。
「バカな……その小規模で
男は俺の放った攻撃に声を荒らげる。
相当分厚く作られているようで、海水これなら安心してぶっ放せる。
「レールガンってやつだろ?
漫画で見て一度やってみたかったんだが、電気の圧縮が難しいな。それと反発の反動もでかい」
そして、再び引き金を引く。
放たれた破片は電熱で真っ赤になり熱を帯びたまま
クラブの八つの足の付け根から四本同時に吹き飛ばした。
片側の足が無くなり、バランスを崩して地面に倒れこむ。
そしてさらに目と目の間に一撃電磁投射砲を打ち込んだ。
黒い煙を噴出し、機体の電気設備が電磁投射砲の影響でバカになり悲鳴を上げている。
「威力を抑えれば制御しやすいな。これなら連発もできる。
対魔術だとか言ってたが、対物理もしっかりしておいた方がいいぞ」
その後に放った一発でクラブは爆発。完全に動きを止めた。
「いひひ、即興の電磁砲とは恐ろしい……これが魔人の力か……。
いいだろう。そこにエレベーターがある。そこの前に立ちたまえ」
言われた通り、エレベーターの前に立つと、ピーと音がした。
開ボタンの横のランプの色が赤色から緑色に変化している。
「ロックは解除した。それで最上階まで登ってきたまえ」
あの芸当を見せても
相当な自信があるのか、相当なバカなのか。まあいい。
「お荷物を拾ってから向かわせてもらう。
男は突然奇妙な笑い声をあげる。
「いひひひひ、拾ってくる必要はないよ。
もうすでにスクラップ場から回収しておいたから、いひひ」
その言い回しが少し
「そうか、気が利いてて助かる。なら朔桜とガキを用意して待ってろ」
「ああ、君が来るのを楽しみにしているよ。ロード・フォン・ディオス、いひひひひひひ」
笑い声の途中で、スピーカーの音は途絶えた。
ロードは頑丈に作られた小奇麗なエレベーターに乗り込む。
最上階のボタンを押し、閉のボタンを固く握った拳で強く、強く押し込むのだった。
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