第42話 竜宮城の管理者
元気な返事をして、来た道まで一気に駆け抜ける。
扉を押し飛ばして暗い階段を駆け下りた。
次第にオイルや錆の臭いが鼻をつく。
階段を降りきり、錆びた扉を開けようとしたが、先ほどよりもなにか騒がしい。
スクラップ場の扉を少し開け、中の様子を見てみると
エビの様な形のロボットが壊れたロボットを次々と部屋の隅に空いた縦穴に押し出している。
あのロボットはルンバみたいなもので、あそこはダストボックスだろうか。
大量にあった機械の山はほとんど無くなっていた。
全部片づけられる前に、ロードに言われた破片をなんとか回収しないと。
扉を静かに開け、身を屈めて小さな破片を手に取った瞬間、ロボットたちが一斉にこっちを見た。
「へ?」
残骸を押し出す作業をやめ、一目散にこちらに突っ込んで来る。
「まずい! まずい! まずーい!!「
錆びた扉を蹴り開け、
すると、私を追って二機が階段を上って行ってしまった。
これではロードが挟み撃ちにされてしまう。
こちらに気を引き付けて二機を戻そうとしたが、移動速度が速く
行動を起こそうとした時には、もう姿は見えなくなっていた。
「まあ……ロードならなんとかなるよね……」
とりあえず、破片は数個拾って戻らないと怒りそうだ。
ここに来るのは、私が頼んだ事だ。
なんとか彼の役に立たなくては。
見たところ、残りのロボットの数は三機。
エビのような見た目で尻尾も付いている。
大きさは自動車くらい。
長さは二メートルほどはあるだろうか。
さて、どうしたものかと手をこまねいていると
突然、錆びた扉の蝶番がバーンと外れ、大きな音をたて地面に落ちる。
「あっ……」
錆びているドアを何度も乱暴に開けたからだろう。
そのせいで隠れる場所が無くなり、音に反応したロボットたちがこちらを向いた。
私の姿が完全に捉えられてしまった。でも、一方通行の階段に逃げたら終わりだ。
この機体は私の走る速度より遥かに速い。
とりあえず、スクラップ場の比較的、片付いていない場所へ走る。
足場が悪ければ、そんなに速度を出せないはず。そう思って移動したのだが。
地面を蹴り、尾の方からドーンと、目の前にロボットが飛んでくる。
「うそぉ!」
腹部からたくさんの足が現れ、器用にも悪い足場をものともせずに私に迫ってきた。
すぐに方向転換し逃げようとしたら、
足元にあった機械の隙間に足を取られ、動けなくなってしまった。
ああ、今日はなんて運が悪いのだろうか。
エビのロボットがそんなのお構いなしにどんどん迫ってくる。
このまま潰されてしまうのだろうか。
そんなのは……嫌だ。
なんとか足を引き抜こうと必死に
しかし、足は抜けない。
そんな時ふと目に付いたのは、包丁のように鋭い鉄板。
私はすぐにそれを手に取る。
三匹のロボットに囲まれ逃げ場は無くなった。
このままやられる訳にはいかない。
せめて戦ってやる。自身を
「
突然、女の子の声が聞こえた。
「え?」
腰まで伸びた色素の薄い
右側から分けた長い前髪からちらりと透き通った海の様な綺麗な目が見えた。
体に薄く透けたシースルーの長い布を乱雑に何重かに巻いた
幼い中学生くらいの女の子が立っていた。
「危ないから、それを置いて?」
鈴のような綺麗な声に
「あ……うん……」
私は強くこわばった手を緩め、鉄板を地面に置いた。
少女は私の目の前に座り込み、首を傾げ不思議そうな顔で私の顔を覗き込む。
「な……なに?」
「ううん。あなたは他の子より大人だなって思っただけだよ?」
他の子より大人? どういうことだろう。
ふと会話の途中で、我に返る。
エビのロボットはどうなったのか。
周囲を見渡しても三機とも見当たらない。
「あれ? ロボットがいない……」
「ん? ロブスターの事? 全機下がらせたから大丈夫だよ、安心して? 今足抜いてあげるね?」
女の子はあっという間に重い機械の
「あ、ありがとう……。あのロボットたちを下がらせたって……あなた何者……?」
「ん? ノアだよ? ここ、竜宮城の管理者だよ?」
ノアと名乗る少女は、私にあどけない笑顔で笑いかけた。
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