第41話 敵地潜入!
辺りは見渡す限りの海、海、海。
周辺には人も島も何もない。
そんな海のど真ん中でロードはぴたりと動きを止めた。
「着いたぞ」
「なにも見えないけど……まさか……」
朔桜は表情を曇らす。
「ああ、そのまさかだ。あの機械共が戻った場所は……海の中だ」
ロードは顔色一つ変えず、無常な宣告を告げる。
「海の中って……どうするの?」
「どうするって行くんじゃないのか?」
「だって海の中だよ? どうやって?」
「こうやって」
周囲に大きな球体状の風壁を展開。
着水後、水の魔術で風壁ごとそのまま海中に潜っていく。
「すごい! 風の魔術って
「風の魔術の汎用性……うっ頭が……」
突然、ロードは片手で頭を抱えだす。
「どうしたの? 頭痛いの?」
「いや……なんでもない……。それより、見えてきたぞ」
太平洋の沖合。水深五百メートルの太陽の日が届かない冷たい深海。
周囲を人口のライトに照らされた明らかに目立つ赤い建物。
その周囲を大小様々な魚たちが群れを成し、自由に泳いでいる。
煌びやかな装飾も合いまり、まるで御伽話に出てくる竜宮城のようだ。
正面の大きな鳥居に似た門をくぐると、その先に大きな縦穴を見つけた。
「ここが入り口か?」
その穴の先は真っ暗でなにも見えず、魚一匹泳いでいない。
「とりあえずここから入るぞ」
ロードは迷いなく縦穴に入ると、水は急激に流れを変えて吸い込んでいく。
しかし二人は焦る事もなく冷静だ。
水流に身を任せ、どんどんと穴の奥へ進むと、傾斜の先に明かりが見えた。
浮上すると、目の前には船着場のような広がった空間に辿り着く。
海から陸地に上がれるスロープがあり
その上に十を超えるロボットが横一列に並んでいる。
「俺が破壊したロボット同じ見た目だ。ここで正解みたいだな」
海から足場に上陸し、周囲を警戒する。
見張りなどは、いないみたいだ。
「それにしても、この時代に二メートル近い大型ロボットを
十機以上も製造できるなんて凄い技術力……」
朔桜が感心してロボットを眺めている間に、ロードは手早く並んでいる機体を調べていく。
そしてある一機の前で足を止めた。
そのロボットの足元だけ周囲の機体と違い濡れて水溜りができている。
先ほどの穴を通ってここに帰ってきたばっかりのようだ。
「微弱だが、こいつから俺の魔力を感じる。逃げたのはおそらくこの機体だ」
念入りに調べてみても、みうがいた痕跡は何もなかった。
「ここに子供はいない。だが、見ろ。あの奥に道がある」
ロードが指差す先にあったのは非常ドアのような鉄板の扉だ。
「よし、行きましょう!」
みうの手がかりを探すため、二人は先へ進む事にした。
扉を開けると朔桜はあまりの臭いに声を漏らす。
「う゛っ……なにこの臭い」
扉の先に繋がっていたのは、オイルや錆の臭いに満ちた薄暗い場所。
おそらく、スクラップ場だろう。
壊れた機械のパーツが、山のように廃棄されている。
中には真二つに切断され、そのまま捨てられたような、新しめのロボットもたくさん転がっている。
これほどの量を使い捨てれるなんて、いったいどれだけの資金を持っているのだろうか。検討もつかない。
二人が入って来た扉の横にはもう一つは激しく錆び付いた扉があった。
ロードは錆付いた方の扉を足で蹴り開ける。
扉の先は急な上り階段が連なる。先は薄暗く、到着点が見えない。
「これ登るんだよね……?」
「それ以外ないだろ、行くぞ」
二人はスクラップ場を足早に去り。上りの階段を黙々と上がる。
そして、登りきった階段の先にあった綺麗な白い扉を開けた。
壁一面は並の衝撃では壊れない強化タイル。
広く明るい長方形の部屋が広がっていた。
「嫌な予感しかしねぇ……」
ロードがそう言った途端、天井のシャッターが開き、重量ある巨大物が落下し、足元が揺れる。
銀色の
鋭いナイフのような大きなはさみ。
そして六本の足と小さな黒い目。
これは誰がどう見ても、でっかいカニ型ロボット。
ロードは現れた巨大ロボットに呆れたのか
今までのパターンに呆れたのか、深い溜息を漏らす。
「やっぱりな……。大体、でかい部屋では……でかい敵が出てきやがる!」
出会い頭にいきなり、ロボットに向けて大きな電撃を放つ。
激しい衝撃が部屋全体に響く。
しかし、大きなカニロボは傷一つついていなかった。
「随分と頑丈だな」
ロードがもう一度大きな電撃を放つもまるで効いていない様子。
すると、広場の大きなスピーカーから突然男の声が聞こえてくる。
「いひひひひひひひ、いかがかな? 私の傑作品
「誰だ、お前」
「いひひ、こんにちは。侵入者のお二人さん。
私はDr.J。ここ竜宮城の主であり、創世神に近づいた天才科学者さ! いひひ」
朔桜は特徴的な笑い方に気を取られて、色々と話を聞いていなかった。
「ずいぶんと浮かれた野郎だな」
「どうも! よく笑顔が素敵だと褒められるよ」
「ならこのガラクタを潰した後、笑えない悲惨な顔を
ロードは以前に戦ったゴーレムの魔物を倒したように風の力で相手を操ろうとする。
しかしクラブと名付けられた巨大なカニのロボットは、ピクリとも動かない。
「くっそ! こいつ、まったく動かねぇ!」
「言ったはずだよ。
この機体の前では、ありとあらゆるどんな魔術も意味を成さない」
「おいおい……。そんなの常に無事象を張ってるようなもんじゃねーか」
クラブのはさみが二人目掛けて飛んでくる。
朔桜を抱えて、ロードは飛翔でなんとか攻撃を避けるが、状況は不利だ。
「風壁!」
距離を取り、入ってきた入り口の近くで風壁を張った。
「魔術はこの機体には意味を成さないと言ったはずだよ!」
「アクアダーラ!」
風壁に向かって水の下級魔術を放ち、水の
「朔桜、危険を承知で頼む。
さっきのスクラップ場で、こいつと同じくらい硬そうな破片をいくつか拾ってこれるか?
大きさはこれくらいでいい」
ロードは指で丸を作り、求める物体の大きさを表現する。
「恐らく、あの
硬さはこいつと同等ぐらいはあるだろう」
「それがあれば、このクラブを止められるんだね?」
「ああ」
「分かった! 朔桜、行ってきます!」
こうして、ロードはクラブの足止め。
朔桜はロードが必要とするパーツを探しに行くため、二手に分かれたのだった。
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