第40話 信用たる助っ人

詩織さんはロードの魔人の力を目の当たりにしたはずだ。

でも、その話には触れないようにしてくれている。

それを含めて私達を信じてくれたのかもしれない。

その信用に応え、何としてでもみうちゃんを探し出さなければならない。

だけど、みうちゃんがロボットに攫われたと決まった訳ではない。

もしかしたらフラっと帰ってくる可能性もあるし

またロボットがこの施設を襲いに来る可能性もある。

その対策として私は黒鏡をポケットから取り出す。

コンパクトな折り畳み式の鏡を開くと通信先が二つ表示された。

一人はロード、もう一人は信頼できる親友だ。私は親友の名前を押し、通信する。


「もしもし、今から――――」


「今行くわ」


来てほしいと連絡すると二つ返事でOK。

彼女は、五分と経たずにここに来てくれた。


「はぁ……お待たせ、朔桜……はぁ……」


綺麗な金髪を揺らして現れた月星つきほし てぃな

息を切らし額に汗を浮ばせている。おそらく急いで来てくれたのだろう。

前傾姿勢で息を整えて、顔を上げるとロードと目が合うと一気に険悪な雰囲気になった。


「なんだ……あなたも居たの? 邪魔だし、帰っていいわよ」


「そうか、そりゃありがたい。帰らせてもらう」


飛翔で飛ぼうとしたところをがっしりと押さえつける。

いつもは人目を気にして魔術を使ったりなんてしないのに。

こんな多くの人の前で飛ぼうとするなんて

それほど明のもとから今すぐにでも立ち去りたいのだろう。

今も地面からちょっと浮いちゃってるし。


「あら? 帰らないのかしら?」


飛び去らない事を明があおる。


ロードは無言で飛翔の効果を上げ、本当に飛ぼうとする。


「人前じゃダメぇ!!! それと、帰らないでぇ―――!!!」


私の声が運動場に木霊した。


門に置いてきた私の荷物を回収し、落ち着いた所で一度仕切り直す。

二人をなだめた後、テキパキと役割とやる事を説明する。

まず、一番の目的はみうちゃんの捜索だ。

役割は私とロードがロボットを追跡し、みうちゃんの捜索。

明はここに残り、ロボットの再来に備えての防衛。

それと、もし、みうちゃんが帰ってきたら、それを黒鏡で私達に知らせるという伝言役だ。

明はとても不服そうだが、なんとか駅前の高級シュークリーム三つで手を打った。


「で? 空に飛んでったロボットをどうやって探すんだ?」


うっ。具体的な方法は考えていなかった。


「ん~~~。なんとかならない?」


「雑かよ! 魔力のない物体なんて追跡のしようがないぞ」


「う~~~~~ん」


ここで言い淀んでしまったらロードは協力してくれないかもしれない。

とりあえず適当な事を言っておこう。


「自分の魔術はどうです?」


「俺の魔術?」


「うん。さっき電撃で破壊したって言ってたよね?

そして、その破片をロボットが回収して行ったって。

その破片にロードの魔力とか残ってたりしないかな~? なんて……」


できたらいいなという軽い感じで提案したのだが、ロードは目を丸くしていた。


「……確かに。それなら追跡できる。

雷の魔術で攻撃した事により、機械の部品に帯電して俺の魔力も残っているはずだ。

お前、意外と賢いな」


予想外に褒められてしまった。

たまたまではあるが、ロードから褒められるのは悪い気がしない。

ロードはすぐに目を閉じ、魔力感知に集中する。

すると、ロードの跳ねた黒髪にバチっと火花が散った。


「方角が分かったぞ。あっちだ」


ロードが指差したのは南東。

繁華街の奥。以前ステン・マイスローズと戦った山と正反対の場所。

地表の七十パーセントを占め、ミネラルが溶け込んだ巨大な塩水。

そう、示した場所は 広大な海。太平洋であった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る