第12話 連戦に次ぐ連戦

俺の言葉を皮切りに千剣蛇は無数の剣を口から放ちだす。

千剣蛇が放った剣を風壁で弾き、その剣を片っ端から拾っていく。

俺が着ている魔装『黒鴉の衣』は鴉が散れば衣が消え、鴉が集まれば衣が現れる。

衣の内側は異次元スペースのようになっていて、物を大量に収納することができ

衣服の中にいくつかの魔導具が収納してある。黒鏡もそのひとつだ。

剣を回収している間も敵の攻撃は止まらない。

風壁で攻撃を弾きつつ、淡々と落ちている剣を百本ぐらいは集めた。

やがて千剣蛇は剣を吐き出すのを止め、瞬時に地に潜り一直線でこちらに向かってくる。

千剣蛇の位置を捉え、風創(ふうそう)を唱える。

風で弓を造り出し、先ほど拾った剣を弓に掛け放つ。

放たれた剣は風をまとい速度を上げ

地上にわずかに出ている千剣蛇のまっ黒い鱗を貫き体に突き刺さった。

しかし、黒い巨体の速度は全く落ちる様子は無い。

その後も、数発打ち込み体に命中するも全くダメージが入っている様子がない。

あっと言う間に距離を詰められ、その場を離れようとした瞬間

足元から大口を開けた蛇の顔が出現。

瞬時に敵の口の中に球状の風壁を放り込み難を凌ぐも

風壁はすぐに亀裂が入り噛み砕かれてしまう。

その隙に顔に剣を数本投げ、突き刺さすも全く効いていない。

事もあろうに、その刺さった剣はみるみる千剣蛇の体内に吸収されてやがる。

魔力節約のため拾った剣でちまちまと急所を射抜いていく作戦は徒労とろうに終わった。


「アースクエイク!」


次は地面から尖った土が千剣蛇に突き刺さるもいとも容易くするりと抜ける。

段々千剣蛇の特性が分かってきたぞ。

こいつはほとんどゴムみたいなもんだ。

たぶんこいつには物理攻撃そのものが効かないのだろう。

剣は吸収されてしまうので剣で切ることもできない。

例えるなら斬れないゴムというところだろう。


「そうゆうことなら」


飛翔で空中へ移動し、そのまま空中で浮遊。


それを追う千剣蛇の体は、空飛ぶ鳥を狙うかの如くゴムの様にみるみる伸びていく。


「ゴムの体質で伸びているなら直線にしか動けないよな」


そのまま待ち構えるロードに千剣蛇は口から剣を放つ。


「その芸当は見飽きた」



急降下し千剣蛇のちょうど真ん中辺りの腹を力強く蹴り飛ばすと

その衝撃でくの字型に曲がり、地面から大きな尻尾が飛び出てくる。

体を支える支点にしていた尾が地面から離れ、千剣蛇の体は支点を失った反動により、

空中でもとの大きさに縮んでいく。


風握ふうあくわん


ロードは空中で千剣蛇の尾を風の手で掴み、ぐるぐると回す。

遠心力で少し伸びた辺りで頭と尾先をクロスさせ胴に丸を作り

その丸目掛け千剣蛇の頭を蹴り入れた。

何をされているのか千剣蛇の理解が追いつかないうちにもう一度素早く尾を掴み、ぐるぐる回す。

これで完成だ。

千剣蛇の身体の中心を見るとそこには結び目ができていた。

それに気づき体をクネクネと動かし慌てて解こうとするがもう遅い。

結び目の近くの体を風の手でしっかり掴み、思いっきり左右に引っ張る。

どんどんと千剣蛇の体は伸びていくがロードは手を休めない。

伸びる限界以上に引き伸ばされると、苦しそうにしながらも体から剣を放ち出し暴れる。


「これで終わりだ」


一点の結び目に力がかかった千剣蛇の体は輪ゴムが千切れるように

結び目から真っ二つに引き千切れた。

大量の血を吹き出しながら伸びた体が収縮してゆく。

だが、まだ動きは止まらなかった。

頭部のある部分が空中で必死に足掻く。


「お前の負けだ。消え果てろ、千剣蛇」


尻尾の方を地面に落とし、頭部の方を空中で掴んだままフレイレイドを放つ。

頭部に小さな火が付きそれを風で覆い、回転させ酸素を大量に送る。

それにより小さな火弾は、瞬く間に大きな火炎へとなり、千剣蛇の頭部を焼き払った。


千剣蛇は消滅し、その体はエナとなり澄んだ夜空にキラキラと舞い散る。


そのエナを吸収し、雀の涙程度の魔力を回復させた。


連戦で消費した魔力量とまるで見合わないが、まあいいだろう。


俺は近くの岩に腰を下ろし、やっと一息つく事が出来たのだった。

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