#3F 初めての地下探索
マークに連れられて久方ぶりに地下に戻った時、まず最初に思った事はやはり“暗い”という事だった。
地下は陽の光が入らないので、外とは比べ物にならない程に暗く……そして寒い。
(おかしい…とっくに慣れていたはずなのに…)
思わず身震いをするとドロレスが俺に心配そうに話しかけてくる。
「ネオ…なんか拾い食いでもした?」
「いや、してない。ただ何となくココが凄く嫌な場所に思えたんだ」
「住んでたんでしょ?」
「住んでても、嫌なものは嫌だ。俺は目が醒めた」
地上で買ってきたのであろうランタンを片手に持ったラルクを先頭に地下を進んでいくと、やがて一つの扉に辿り着く。
「玄室か…敵が潜んでるかもしれないから警戒は怠るなよ」
(ドロレス…この扉の先は玄室で合ってるのか?俺には死体安置所には見えない)
(…敵が潜む部屋を玄室って言うのよ)
(何故だ?)
(あ、マークが開く…集中!!)
扉が開くと中からムササビのような魔物が4匹ほど飛び出してくる。
「ラルク、エアラットだ!迎撃しろ!」
ラルクはそれに反応して槍を構えるとと、素早くエアラットを突き刺す。
「しゃあ!まず1匹!」
仲間がやられた事で警戒心を強めたエアラット達は、俺を目掛けて滑空してくる。
しかし、俺の元に着く前にドロレスの詠唱が間に合い、小さな火の玉が1匹に命中し、巻き込んでもう1匹を撃墜する。
その隙に俺は突進してきた最後のエアラットに対して剣を振り下ろし、片耳を叩き切る。
叩き切られたエアラットはのたうちながら墜落し、動けないままだ。
「ネオ、ナイスよナイス!」
間髪入れずに止めの一撃を加えようと近付いて側に立つと、剣を持ち変え、突き刺す動作に入る。
「や…やめてくれ。死にたくない…」
命乞いをしてきたエアラットを見て、思わず剣を止めてしまうと背後からラルクの声が聞こえてくる。
「おい、どうした!?早くやれよ!」
「で、でも…コイツ…う、うわぁあぁ!」
声にならない叫びを上げながら剣を振り下ろす。……何度も。何度も……ただ無心のままに刺し続けた。
***
少しすると、ドロレスが不安気な表情で声を掛けてくる。
「ネオ…大丈夫?」
「コイツは命乞いをして…俺は何故か斬れなかった。…何故だ!!」
動揺した気持ちを散らすようにドロレスに掴みかかると彼女は小さな声で諭すように話し出す。
「…良いと思うわ。優しくなったって事なんだから」
「優しく…?」
「うん。…それに、そのうち慣れると思うわ。…マーク!掘り出し物とかあった?」
マークは振り向きながら楽しそうな声で俺達にこう告げる。
「ああ!エアラットの奴、ご大層に宝箱を懐に隠していたぞ」
マークはそう言うと、ランタンで宝箱を照らして見せてくれる。
宝箱の外観の装飾を見る限りでは中身の方にもかなりの値打ちが期待できそうだ。
「良いか、ネオ。こういう宝箱っていうのはモンスターの落とし物であっても大抵罠があるから気を…」
「ぎゃあああ!?」
マークが目を話した隙に宝箱を触っていたラルクが鎧でくぐもった叫び声を上げる。
急いで宝箱に視線を映すと、中から覗く血走った眼によって石化させられてしまったラルクが横たわっているのが見える。
「あの馬鹿野郎…。ルーノ、石化は直せるか?」
「いえ…石を綺麗にする魔法ならあるんですけど」
ルーノが自信なさげにそう言うと、マークは途方に暮れて上を見上げる。
「…帰るか。バレル…足の方持ってくれ」
結局その日は帰り道にもう一回戦ったぐらいで、それ以上は成果を得られずに終わってしまった。
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