第27話 長峰美姫16歳。

学院の僻地、南棟に向かってスタスタと早足で廊下を歩く二人の女生徒がいる、一人は美しい黒髪を揺らし少し慌てている、バレー部キャプテン桐生美鈴。もう一人は、制服の衿色からして1年生の娘のようだ。

170cmある桐生美鈴より10cmくらい低い身長で、ベリーショートの活発そうな娘だ、顔立ちはどこか生徒会長である黒崎明日菜に似ているが、胸の大きさは桐生美鈴と同じDはあるだろうか、中々ご立派である?

早足でプリプリと怒りながら歩く彼女を、桐生美鈴が慌てて追う形だ。



「ちょっと、美姫みきさん。本当に大丈夫ですから、私気にしてませんから。むしろ気にして欲しい……。し嬉しいですわ」


「何を言ってるんですか、桐生先輩! 先輩のような立派な方が、良く分からないおっさん教師と付き合ってるなどと噂されてるんですよ!!」


うがーっと拳を突き上げて怒りを表す女生徒、美鈴の方にクルリと向き直り声を荒げる。


「なんで、他のバレー部の方達は誰も文句を言わないんです!!」


「そ、それは、むしろ……応援して。それに鉄先生は、おっさんなんかじゃ無いですわ」(歳だけなら十分おっさんです)


「桐生先輩は、九星学院運動部女子全員の代表なんですよ。それなのに、こんないわれもない恥ずかしめを受けて、私は黙ってられません! 一言言ってやらないと気がすみません!!」


「いや、まぁ、恥ずかしいと言えば、恥ずかしかったのですけど……」


「ほら~そうでしょう、だから私からそのおっさんに、ガツンと言ってやります!! 場合によっては私の拳で修正してやります!!」


「ああ~、もう、どう説明すれば分かってもらえますの! こういう行動力は本当に黒崎会長そっくりですわ!」



この娘、名を長峰美姫ながみねみきと言う。

1年A組、女子バスケットボール部シューティングガードとして、この冬の大会からレギュラーを獲得した期待の新人である。鋭いドリブルを武器に敵サイドに斬りこむスタイルは、黒埼明日菜の様なダンクをバシバシ決める派手さは無いが、次期エースの素質は能力、容姿共に十分に満たしている。

黒埼明日菜に憧れ九星学院に入学したが、彼女が入学するとすでに黒埼明日菜は怪我で高校バスケットボール界を引退しており、なぜか生徒会長に就任していた。

そこで「明日菜お姉様のご無念は、自分が晴らしてみせる!!」と公言。そのままバスケ部に入部した彼女は、その素質から次期女王候補に挙げられている。

なおかつ現女王の桐生美鈴とも交流があり、黒埼明日菜に密かに憧れている美鈴とは意外に仲が良かった。


そんな二人が美術準備室のプレートのかかった黒い扉の前に到着する。




「ここが、あの男のハウスね」


美姫は扉を睨みつけるとドアノブをガッと掴み、美鈴が止める間も無く勢い良く開け放つ。


「たのもぉ~!!!」


「それじゃあ、道場破りですわ!!」


桐生美鈴が珍しくツッコミを入れる。







その頃、生徒会室では。


「ヘックチ!!」


「いや~大分寒くなって来たね。こんな日には、温かいものが飲みたいね~、春ちゃん」

「そうですね。ミルクたっぷりのカフェオレもいいですが、ココアも捨て難いですね」

「はーい! 私は甘酒がいいと思いま~す」

「秋ちゃん、甘酒はさすがに先生の所には無いと思うわよ。いや、有るかな?」


「なんで皆さん、青桐先生の所に行くこと前提で話ししてるんですか?」


最近は青桐先生の所に行くのに遠慮が無くなってきたなぁと思う、1年A組書記の紫 夏君、16歳であった。

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