第20話 黒埼明日菜vs桐生美鈴3
この試合最初のサーブ、場内が静まりかえり皆の注目が集まる。そんな中バレーボールを高々と上げた、狙うは唯一点。
まずはご挨拶といきましょう。
バンッ
身体能力をフルに活かしたジャンプ、高い打点から十分なドライブ回転を掛けたサーブが黒埼会長を正確に捉える。
「オォーッ、桐生さんご自慢の正確無比のジャンピングサーブ!!」
ギャラリーが私の打ったサーブに歓声を上げる。
バボンッ「くっ、重っ!」
黒埼会長が、辛うじて右手一本のパンチングで受け止める。舞い上がったボールを白井さんがトスで繋ぎ、赤城さんがアタックをかけてる。ふっ、アタックまでの繋ぎが遅いですわ!
「若松、ブロック!!」
「くっ! 流石バレー部」
身長175cmの若松のブロックが綺麗に決まって、まずは1ポイント先取。でも流石黒埼会長ですわね、私のジャンピングサーブを初見で、しかも右手だけで受け止めるとは。だけどこの流れが続くようなら、私達の勝ちですわ!
ならば、もう一球いきますわよ黒埼会長。一回目の30cm右狙い、ここならどうです!!
バシィッ
「黒埼会長、僕が受けます!」ボンッ
「「えっ、鉄先生」」
割り込んで来た鉄先生が、黒埼会長の代わりに前に出てレシーブをする! 完璧に受けられた! リベロなの?
鉄先生の上げたボールを繋いで赤城さんが高くバックトスを上げる。
でもそんな自陣コートの中央にあげてどうするの、アタックラインすれすれじゃない、遠すぎるわ。
次の瞬間、ドンッと激しい踏み切り音が聞こえたかと思うと、黒崎会長が高く舞い上がるのが見えた。
何、その高さ! ネット越しに黒崎会長の胸が見えるっていったい何センチ飛んでるのよ!!
その常識外れの高さから振り下ろされるのは、これまた常識外れの球速。
バチィーーッ!!ドオンッ!!
「ア、アウト!」
線審のコールが響くが、誰も動けなかった。私と戸田の間を抜けたのに指一本動かす事が出来なかった。
バレーボールの球速じゃない、バズーカ砲でも撃たれた気分だ。
「ウオォーーーーーーッツ!!!!」
「何、今の。黒崎会長のスパイク凄っ!!」
「会長カッコいいーーーっ。鳥人かよ、あの高さ!!」
「俺、球が速すぎて見えなかった」
「でも、おしい、アウトだった」
途端にギャラリーが爆発したように歓声をあげる。
そうだ、黒崎会長が怪我をしてから見ることがなかったから忘れていました。彼女のバスケでの得意技は、メテオジャム。人間離れしたジャンプ力からのダンクシュート、あのジャンプ力だったら今のスパイクを撃てても不思議じゃない。背中に冷たいものを感じた、これだから天才ってやつは、向かいのコートの黒崎会長を見るとちょうど目が合った。
「今のでコツは掴んだわ、次は外さない!!」
右拳を私に向け、宣誓してくる黒崎会長。そうだ、この化物じみた人に憧れて、私はバレーを頑張ってきたんじゃないの。
心構えが間違っていた、彼女に上から目線で対峙するなんてとんでもない、挑戦者の気持ちで臨まないと一方的に敗れかねない、向こうが力技で来るならこっちはテクニックで勝負よ、現役バレー部の力見せて差し上げるわ。
「戸田、丸亀。バレー部の意地に賭けて、死ぬ気でレシーブなさい!! 」
「ハ、ハイ! 桐生先輩!」
「美鈴ぅ~、あんなスパイク受けたら本当に死にそうなんですけど~」
ええい、丸亀。貴女、後輩の前で情けない弱音はかないの、私だって本当は怖いんだから。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます