第10話 文化祭実行委員長 李奉先の悲哀
その日生徒会室にはこの学院のプリンス、剣道部の李奉先が呼び出されていた。
部屋の中には黒崎明日菜と副会長赤城春の2人が待ち構えていた。
「僕が文化祭実行委員長ですか?」
「うん、李くんなら、私も信頼できるし、是非受けてくれないかな? 頼れるのは李くんだけなんだよ、お願い!」
黒崎明日菜の上目遣いのお願いが炸裂する、効果は抜群だ。
「黒崎会長がそこまで僕のことを……分かりました。この李 奉先。黒崎会長の信頼に全力で応えてみせます。おまかせ下さい!!」
「本当! ありがとう! 凄くうれしいわ」
目の前で行われている、残酷な茶番劇に遺憾の意を発したくなる。李くんよ、副会長として心の中で謝罪しよう、君は決して悪くない。理由があるとすれば、君が坊やだったってことさ。
学院の王子として有名な、李 奉先くんの手をしっかり握り、笑顔で感謝の言葉を告げる黒崎会長。その行為で顔を赤らめるチョロ李くん。
会長のスラッと長い足、その上の短いスカートの中から、悪魔の尻尾がチラリと見えた気がする。
黒崎会長のあざといお願いで、めでたく文化祭実行委員長に就任してしまった李 奉先くんは、黒崎会長の期待に応えるべく、持ち前のスペックの高さを活かして文実をぐいぐいと引っ張っていく、そう言う点では彼のカリスマもたいしたもんだ。その結果、今年の文化祭の準備は例年になく順調に進行して行った、順調すぎて怖いくらいだ。李くんの母親である理事長も味方に巻き込んだ手腕は、見事の一言につきる。もし彼が生徒会長に立候補したならば、黒崎会長も結構苦戦するのではないだろうか。少なくとも女子の票はかなり集まるだろう。
「よ~~し。明日は文化祭だーーー!!」
放課後の生徒会室で拳を突き上げて喜びを表現してやった。
九星学院は11月に文化祭がある。他の高校では7月位に開催する所が多いのだが、部活動の盛んな九星学院では、インターハイや夏の大会が終わった後、冬の大会前の11月に開催するのが通例となっている。まぁ、7月だと1年生にとっては、準備期間が短すぎるし良いんじゃないかな。
当然、生徒会も色々と手伝いや根回しで裏に表に忙しい訳だが、今年は文化祭実行委員会の李くんにかなりの部分を押し付けたのでちょっと余裕がある、この分なら私達もお祭りを楽しめそうだ。
李くんには感謝しなくてはいけないな、今度、剣道で使う手ぬぐいでもプレゼントしよう、確か国道沿いのワークマンで1枚100円位で売ってたはずだ、マフラーは先生の分しか編んでないしな。
江戸川は、茶道部の野点で忙しいはずだし、美鈴さんはバレー部で出し物があったはず。邪魔者のいないこのチャンスは絶対に見逃せないわ!!
「今年は、絶対に鉄先生と文化祭を見て廻るのだ!! わははははははは!!」
生徒会室の窓際で、夕日をバックに高笑いを始める、黒崎会長。
「春ちゃん、会長が壊れちゃった」
「大丈夫。黒崎会長が壊れてるのは恋愛機能だけで、他の機能は無駄に優秀に出来てるから心配いらないわ」
「会長はいつだって完璧ですよ~」
あぁ、そうか今日は夏君も来ていたっけ、忘れる所だったこの会長のワンコめ。
「夏君も、気をつけないと李くんみたいに都合のいい男になっちゃうよ」
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