第8話 江戸川まゆの来襲

2年B組、江戸川まゆ。茶道部部長で老舗旅館の娘。160cmと小さいながら(全国女子平均身長より上よ!! あんたらがデカイのよ。byまゆ)その態度はとても大きい。

小悪魔的なかわいさで男子生徒に人気があるが、着物を着ると雰囲気がガラっと変わって、上品な感じになる変態さんだ。

この学院の文化部代表を務める女王の一人。そして鉄先生の存在を知っている、いつもちょっかいを掛けてくる害虫でもある。

だけど、今はそんなこと言ってる場合じゃないわね。



「江戸川ぁ~っ。聞いて、聞いて。美鈴さんが私の先生寝とった~!!」エグエグ


「ちょっと。まゆって呼びなさいよ! 江戸川ってなんか響きがおっさんぽいから嫌いなのよ」

「ん、ちょっと待って、先生って、鉄先生の事? どゆこと? ホワイ?」



「なにゅ~~〜〜〜っ!! バレー部の桐生美鈴が、鉄先生とイチャイチャした挙句、お姫様抱っこで朝帰り!!!!」


「どうしてそうなるのよ!!」


春ちゃんの冷静なツッコミが入る。


「ちっ。油断してたわ。こんな運動神経だけが取り柄の、つるぺた恋愛ヘタレバスケットバカなんか放っておいても平気だと思ってたけど、桐生さんなら話は別ね、要注意人物だわ。ブラックリストに書いとかなきゃ」


アウトオブ眼中に認定された明日菜が江戸川につっかかる。


「なによ、それ。どうゆう意味よ!」

「そのまんまの意味よ」


誰が脳筋のぺったんこだ。成績だって良いんだぞ~。ふくれっ面で江戸川を睨みつける。


「明日菜は鉄先生の前だと、ただのヘタレになっちゃうからまるっきり危機感わかないもの。あんた先生に告白なんて絶対出来ないでしょ」


「なっ!! こ、告白なんて、まだ早いよぉ。まだ、手だって繋いだ事ないんだよ」


ゴニョゴニョと顔を赤くして俯く明日菜。


「ほ~ら、御覧なさい。私は、ちゃ~んと鉄先生に告白してるわよ」


「「えーーーーっ!!」」


江戸川の突然の告白に、黙って聞いていた美鈴さんと声が被った。


「へ、返事は! 返事はどうだったの!!」


思わず江戸川に詰め寄るが、ニヤリと嫌な笑みを浮かべやがった。勝ち誇ったような笑顔、なんか凄くむかつく。



『ふっ。君の事は凄ぉ~く愛しているけれど、今の僕達は教師と生徒の関係。非常に辛いが、卒業したら結婚して子供を作ろう、それまでしばし我慢してくれ』


「そう返事を頂いているわ」


江戸川まゆが肩に掛かった髪の毛をふわっと掻き揚げながら、形のいい胸を張って見せつける様にポーズをつけた。クソ!揺らすな脂肪の塊。後、全然先生に全然似てないぞその口調。



「ちゃんと、原文そのままで白状しなさいよ。鉄先生がそんな事絶対言う訳無いでしょ!!」


騙されるもんか。そんな目泳がせながら言ってる奴の言葉が信じられるか。

江戸川を睨みつけていると春ちゃんが右手を上げ発言を求めてきた。


原文ですと。『すまないな、江戸川くんの好意はうれしいが、男としても、教師としてもそれに応えることは出来ない。君が卒業してもまだ好きでいてくれるなら、また改めて返事をしよう』


ですね。青桐先生に思いっきりスカされて逃げられていました。


「「「春ちゃん(春)、なんで知ってるの!!」」」


「偶然。たまたま、近くにいたので聞こえてしまっただけですよ」


春ちゃんが苦笑いしながら目を逸らす。なんで? でもでかした、さすが副会長、頼れる右腕。正しい情報をありがとう。


「ほら。原文と全然違うじゃない!! 勝手に捏造しないでよ」


「言ってる意味は同じでしょ! 私なりに訳しただけよ!!」


「「「違う、違う」」」


江戸川の言葉に私と春ちゃんと美鈴さんが揃って首を振る。まったく、吃驚させないでよね。どんな翻訳機能よ、このポンコツ娘。


でも、江戸川じゃなくて、私が告白しても同じ事言われそうなんだけど。……気のせいだよね。

わなわなと震える江戸川が、八つ当たりぎみに声を上げた。


「くっ。それより今は、桐生さんの件でしょ!!」


あっ、話し逸らした。っていいんだ、今重要なのはこっちだった。


「そうよ。美鈴さんは先生のことどう思ってるの!!」


「「さぁ、さぁ!!」」


江戸川と二人がかりでじりじりと壁際まで追い込んで桐生さんを問い詰める、絶対に逃がさんぞぉ~。


「わ、私は……」



ガラッ。



「白井さんが急用だって呼びに来たんですが。なにかありましたか?」


「「「鉄先生!!!」」」



「なんか前回と同じ引きですね。天丼ですか?」


春ちゃんは誰に何を言ってるのかな。

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