第6話 黒崎明日菜の衝撃

「ランララランラ~ン♪ 今日は、どんな理由で鉄先生の所にお邪魔しちゃおうかな~」


昨日は、桐生美鈴に途中で邪魔されちゃったからな。

でも、美鈴さんて何かにつけて私に絡んでくるのよね、私あの子に何かしたっけ?

いっつも「貴女は生徒会より、バスケットボールでも追いかけている方がお似合いよ」とか澄ました顔で嫌み言ってきて。

そんなに私って生徒会長が似合ってないかな?


機嫌良さげに歩く黒崎明日菜、それを見かけた男子生徒達が歓喜の声を上げる。


「お、おい。黒崎会長だぜ。今日も超絶キレイだなぁ」

「おぉ。朝から会長を見れるとは今日はツイてる!」

「相変わらず、超足なげぇ~、あの御御足(おみあし)で踏まれてみてぇ〜」

「声掛けていいかな? いいよね? ゲッ、彼奴は!」



「黒崎会長。随分とご機嫌ですね」


職員駐車場からやって来る鉄先生を待ち伏せしようと、体育館横を歩いていると後ろから声を掛けられる。


「あら、李くん。おはようございます」



振り向いた先にいたのは李 奉先りほうせんくん。剣道部の主将で、この学院の理事長の息子さん。春ちゃん (副会長)と同じ2-Bで、身長高いから目立つんだよね。

お母さんが中国の人だからか、どこか日本人ぽくなくて韓流スターみたいな雰囲気のイケメンさんだ。

春ちゃんが言うには、チャン・グンソクって俳優さんに似てて女子から大人気なんだとか。誰だよソレ。

だが私に言わせると、まだまだ渋さが足んないだよな。渋さが。ふっ、おこちゃまに用はないぜ。

まぁ、成績も常に学年トップだし、女生徒に人気なのも無理もないかぁ。

だけど彼が居るせいで、私も桐生美鈴もなかなか1位の成績が取れないんだよね、この学院ってこう言うスペック高いキャラが多くないかな?(あんたもその一人だがな)


「おはようございます。朝から黒崎会長とお会いできるとは嬉しいですね。とても素晴らしい1日になりそうです」


うぉっ、キラキラと笑顔が眩しいな、こんにゃろ。


「それにしてもどうしたんですか? こんな朝早く道場横で。も、もしかしてウチの部の見学ですか!!」


「いや、全然違うよ。えぇ~と、そうだ。バレー部に用があって」


「あぁ~、そうなんですか~。それはとても残念ですね」


なんだろう、李くんのこの反応は? 嬉しそうだったり、落ち込んだり。体調でも悪いのかな、具合が悪いんなら部活休めよ。

そんなことより、もうそろそろ鉄先生が来ちゃうよ~、そわそわと駐車場に目を向ける。

あっ、白いロードスター。鉄先生の車だ!

降りて来た、降りて来た。う~ん今日もカッコいいなぁ。えへへ。


「えっ!?」


「どうかしましたか? 黒崎会長」


「ねぇ、李くん。ちょっと私の頬つねってみてくれないかな」


「へっ、く、黒崎会長の頬をですか!!!!! いや、でもそんな、本当に触ってもいいんですか」


「早く!!」


「は、ハイッ!! では失礼して………」プニュ。

「うわっ、柔らか!!」


「痛い……」


「す、す、すいません黒崎会長。痛かったですか」


「……夢じゃない」



なんで、なんで、なんでーーーっ!! 昨日の今日で…………。

私だってまだ乗った事ない、鉄先生の車の助手席から、あの女が。



「桐生美鈴が、なんで先生の車に乗って登校してくるのよ~~~~~っ!!!!」


「うわっ! 黒崎会長どうしました! あれ桐生くん」


突然頭を抱えて悶えるように絶叫する私に李君も吃驚する、そこに近づいてくる人影。


「あら、黒崎会長。おはようございます。李さんも、おはようございます。めずらしいですわね、黒崎会長とご一緒なんて」


「や、やぁ。桐生くん。おはよう。それと、そちらの先生は確か……?」


「理事長の息子さんだね。確か奉先君だったよね。美術の青桐です、よろしく」



なんだろう、認めたくない現実がそこにある、駐車場から鉄先生と桐生美鈴が並んで歩いて来た。し、しかも。いや、待て私、落ち着け私、もしかしたら幻覚かもしれない、まずは確認だ。



「美鈴さん。…………な〜んで先生と腕組んで歩いているのかな?」ギロリ


「ひっ! どうされましたの黒崎会長。そんな怖いお顔をなさって」



ぐぬぬ、この泥棒猫めぇ!! ことの次第によっては、来期のバレー部の予算なんか0にしてやるからなぁ~~~~!!

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