第4話 青桐鉄
銅製の薬缶にエビアンをタパタパと注ぎ火にかける。沸騰する間にガラス製のティーポットと、ウエッジウッドのカップを棚から取り出して保温ケースの中に入れて温めておく。
棚の前でしばし考える、今日はセイロンのセカンド・フラッシュでいいのが手に入ったから、それでいいかな。
シュンシュンと薬缶がGOの合図を送ってきたので、保温ケースからティーポットを取り出し茶葉を投入して熱湯を注ぐ。
ポットの中で茶葉がゆらゆらと踊ると綺麗な赤色がポットの中に滲み出す、この瞬間が好きだ。
カウンターの向こうで、黒崎会長と並んでこちらを見ていた桐生さんに声をかける。
「桐生さん、紅茶にミルクは入れてもいいかな?」
日本人はストレートで飲むのが好きって人が多いからな、一応聞いてみる。
「あっ、は、はい。お願いしますわ」
じっくり待つ事3分後、カップの中にミルクと紅茶を注ぎ入れ、桐生さんの前にコトリとカップを置いた。
「随分、本格的なのですね。驚きましたわ!」
本当に驚いたみたいで目を丸くしている。桐生さんが香りを楽しむ様にカップを揺らし、湯気を立てる紅茶を一口飲んだ。
随分と飲み方が様になっている、絵になる
「ホゥ……、本当に驚きましたわ。凄く美味しい! ロンドンで飲んだ紅茶より美味しいかも!」
「ふふん、当たり前よ。先生が淹れてくれた紅茶よ、美味しいに決まってるでしょ」
桐生さんの感想に黒崎会長がなぜかドヤ顔で口を挟んできた、君はいつも珈琲しか飲んでないでしょうが。
「なんで、黒崎会長が威張ってますの?」
桐生さんがコキュと首を傾げた。
「はは。今日はディンブラのいい葉っぱが有ったからね、桐生さんは紅茶派なのかな? まだ、何種類か揃えてるから、今度来た時に試して見る?」
「あら、それはうれしいですわ。是非、また寄らしていただきます」
「なっ! 何言ってるの美鈴さんは、バレー部のキャプテンで忙しいんでしょ!
こんな学院の端っこまでわざわざ来る暇ないでしょうが!」
「この時期は文化祭の準備もありますから、部活動はそれほどでもありませんわ。
この紅茶を飲めるのでしたら、ここまで足を運ぶ価値は十分ありますしね。
………それに、会長ばかりズルいですわ。こんな素敵な場所でこんな美味しいお茶を飲めるなんて」
桐生さんは紅茶をお気に召たようでお代わりを求められた。その間、黒崎会長が羨むように凄い目で睨んできていて、少し怖かった。
えっ、僕なんか悪い事しましたか? それに忙しいのに、こんな学院の端っこによく来てるのは、黒崎会長も一緒じゃないですか。
「うぅ~、先生! 珈琲お代わり!!」ダンッ
ひっ、なんだ、最近の若い子は考えが読めないな、とりあえずクッキーも出しといた方がいいかな?
※紅茶はセイロン系が好きです。
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