第5話 パスタの神様

 オッチャン、ポコポコ歩く。

 いや、足音が無く、

 柔らかい雲の上を歩く。


 ここは、ドコ?

 私は、誰?

 私は、オッチャン。


 その時、オッチャンからみても、オッチャン。

 気の毒な、

 モテなさそうな、

 もうひとりの、オッチャン、

 いや、オジイチャン登場。


 フォークの様な杖と、

 腰にスプーンをぶら下げ、

 プラプラと、

 オッチャンの前に現れる。


「お主、よく頑張ったな。ただの人間の身でアリスの戦士と戦うとは、見上げたものだ」


 オッチャン、生まれて初めて、褒められ、モジモジ。


「しかし、エースナンバーと戦うとは、チト、無謀だったな。奴らはアリスの分身の様なもの。さすがに、人の力ではな」


 オッチャン、思い出す。

 大切な事を思い出す。


「しかし、お嫁チャンが、捕まっているのです。救いに行かなければ」


「まあ、待ちなさい。このパスタの国では、ユックリ時間が流れる。いわゆるスローライフと言うやつじゃ」


『そうなの?』

     (?_?)サクシャ


「お主たちの感覚では、1日が1年くらいじゃ。それにリアル世界のお主の身体は、氷漬け、ついでに、お主の時間も氷漬け。それを何とか溶かさないと、お主は動けん」


「では、どうすれば?それにあなたは、誰ですか?」


 オジイチャン。

    ( ̄ー ̄)ニヤリ

 


「わしか?わしは、パスタの世界のパスタの神様じゃ……」


 ふんぞり返る、オジイチャン。

 しかし突然……。

 電話のベル。


「ちょっと待ってね」


 腰にぶら下げた、スプーン手に持ち、耳に当てると何か話し出した。

 神様と言う割には、低姿勢のオジイチャン。

 スプーンに見えたものは、スマホらしい。


 まるで、キャバクラに行った事が、バレた旦那さんが、奥様に叱られているような……。


 話が、終わった様で、スプーンを元の場所へ。


「すまん、すまん。うどん姫からの電話でな。モチモチの白い肌の美女なのだが、チト束縛が強くてな。え~と、何の話だったか?」


『神様が、物忘れするの?見かけどおりのただのオジイチャンの様な気が……』

         m(_ _)mサクシャ

 


「お嫁チャンを救いに行く話です」


「そうそう、人間のしかもただのオッチャンが、アリスのエースナンバーと戦うのは、無理がある。よって、これを君に進呈するよ」


 神様は、オッチャンの腰にベルトを巻いた。

 ベルトの左右には、スプーンとフォークが差し込まれている。

 そして、バックルは、ヘンテコリンな物が付いていた。


「これは、何ですか?」


 オジイチャン。

 いや、パスタの神様は、自慢げに答えた。


「それこそは、パスタマンのパワーアップアイテム。良い子の変身ベルトじゃ」


『いや、ベルト無くても変身してる設定だし』

         (^_^;)サクシャ


「今までは、ダメ作者の設定から、3分の活動時間制限があったが、これからは違う。バックルには、砂時計。ただし中は砂ではなく粉チーズ。チーズ時計だ」


『いや、湿気ると固まるよね』

        (^_^;)サクシャ


「活動限界時間のギリギリでチーズ時計をひっくり返すのじゃ。そうすれば、もう3分間変身していられる」


『神様にしては、セコいアイテム』

        (@_@;)サクシャ


「何を言う。元はと言えば、お主の設定が甘かったのじゃ」


『………』

         m(_ _)mサクシャ


「神様、誰と話してられるのですか。では、この変身ベルト、いや、マタマタ変身ベルトで、お嫁チャンを救いに行って来ます」


 神様は、肩をすくめる。


「お主も慌て者よの。リアル世界のお主は、動けんと言っておろうが」


 オッチャン、

 焦る。

 慌てる。

 その場で、3回まわる。


「大丈夫じゃ。お主の肉体を元に戻すため、リアル世界に、働きかけている。それまでお主は、この世界で、ベルトの力を引き出せるように、お主自身を鍛えておけば良い」


 それから、パスタの国で、きっかり5年。

 オッチャンが、鍛えあげた頃。


 リアル世界では、イケメン(本当はオッチャン)の氷づけが話題になっていた。


 美魔女や乙女に限らず、あまりのイケメンぶりに、本当は、オッチャンと知らないたくさんの女性のファンが押しかけた。


 オッチャンもてる。

 人生で、一度も経験がない、

 モテ期。

 到来。


 しかし、オッチャンの本体、

 その魂、

 その心、

 そこには、無く。

 自分自身のモテ期を知らない人生が、

 この先もオッチャンに、待つ。


        m(_ _)mオキノドク





 

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