舌の裏

知恵のりんごを勧めた蛇は

彼らはどうせ食べないと安心していた


嵐を背負ったトランペッターは

誰しも扉を開けないと笑っていた


最期のスイッチを差し出す女神は

押す度胸なんてないと欠伸していた


無責任な責任と

背負いきれない軽口の業は


世界の成り立ちからあるもので


星の産声も

ボーリングのピンの音と同じ


彼女が友だちに伝えた先輩からの呼び出し内容

彼が寝坊してお腹が痛いと伝えたバイト先


全てが空気を震わせて

愛を囁く場所と同じ出口から現れる


口閉じることに力は要らず

ただ閉じることは喪失と同じだからと


舌の裏に言霊を隠して


今日も今日とて

我が身可愛く 彼の子愛しく


甘く妖しき教訓を

転がし 囁く





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