とある父への手紙

雲ひとつない青空が

あんたらしいと言えばそうだけど

あんまりカラッとしてるから

悲しむにも拍子抜け


まぁでも

あんたが雨を降らしたとて

ビールくさくてたまんないかな


世間話をする親戚も

こんな時しか会わなくなって

いつの間にやら

わが子が一番背が高い


身長伸びたね

違うよおばさんが縮んだの

なんて 笑えるくらいの青空だ


ちょっと行ってくるから

外食かパチンコくらいの気軽さで

あんたは帰ってこなかった


呑み込むほどの時間も

諦めるほど向き合う機会も

何にもない

ほんと なんでここにいるんだろって

寝たら夢かもなんてまだ思う


周りが泣くから泣いた

周りが怒るから怒った


ただ 集まった人をあんたが見たら

少しは喜んだかなって思うよ


自分が言えることは


最期まであっさりと

でも 蝉が騒がしい夏じゃなく

しんと 落ち着いた冬を選んだ


花も緑も紅葉もない

見上げる景色が一番の

そんな冬を選んだ


それがとてもあんたらしいよね


ありがとうは照れくさい

またねを言うほど浪漫はない

お疲れさまは嫌がりそうだ


黙って見送ると味気ないから

ひと言だけ


たまには飲むの 付き合うからさ

じゃあね




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