四翅 ― shishi ―

微動だにしない風が

私の前に固まって

動き出すことを待っている


偽ったのはいつからか

飛べないと

自分には無理だと


水面を眺め

遥かな青さだけを知る

忘れはしない

光のしるべ


初めて目指した空にある

優れた隣人と

強き鳥


私は何者でもない


四翅を一翅に見せかけて

挑まぬ理由を見せつけて

水面の空飛ぶ夢をみる


か弱き我が身に相応しい

音なき納得を今日ある風に積む


このまま死屍累々の一つとして

綺麗な我が身を晒すのか

貼りついた一翅の厚みを


自嘲でなく なんなのか

せめて一翅を折ってみろ


風の塊を睨みつけ

聞こえるのは

脆き硝子の剥がれる音






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