2023-01-23 お題「片思い」

「ボビー・フィッシャーにいつか感謝を」


小島未来……男の子。小学五年生

中村光……女の人。


〇民家縁側(昼)

  棒アイスを口に咥え胡坐をかく中村光(

  21)。

  正座で座る小島未来(11)。真剣な顔

  をしている。

  二人の間に将棋盤。小島の手がゆっくり

  と駒を動かす。光、即座に駒を動かす。

光の声「はい、王手」

  小島、大きく鼻で息を吸う。

光の声「おいおいまた長考か~?」

  小島、光を見る。光、食べ終えたアイス

  の棒を見る。

光「こりゃ次回はフィッシャールールでも導

 入した方がいいかね。……ちぇっ、外れか」

  光、アイスの棒を咥える。

小島「フィッシャールールって、何……?」

光「ん? そういうルールがあんの。最初に

 短い持ち時間が決まってて、一手指すとそ

 れがちょっと増えるっつーやつ」

  光、服の胸元をつまんで扇ぐ。

  小島、顔を赤くし慌てて将棋盤を見る。

光「おもしれーこと考えるよな。早く指せば

 時間が増えるし考えてばっかだと減る。だ

 から二人の持ち時間の差が伸びたり縮んだ

 りすんの」

  小島、目を丸くする。

小島「時間が縮むの!?」

  光、大きな声で笑う。

光「あっはっは! いやいや、そういうルー

 ルってだけ」

  小島、肩を落とし俯く。

光「でもまあ、わかんねーか。時間なんて人

 間様が勝手に決めたもんなんだしな。伸び

 たり縮んだりしてもおかしかねーや」

  小島、驚いた顔で光を見る。

光「とりあえずアンタは早く次の手考えな。

 アタシはその間にアイス取ってくっから」

  光、立ち上がる。

  小島、将棋盤を見る。

小島「……縮んだら、いいな」  

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