2023-01-16 お題「サンマ」
「無いのかよ」
杉本高史(20)……男。美大生。制作課題の進捗がよろしくない。
秋野忍(22)……女。美大生。変人。
〇美術大学校内広場(夕)
上着のポケットに手を入れ、呆れた顔で
立つ杉本高史(20)。
杉本「何やってんすか先輩……」
秋野忍(22)、しゃがみ込み団扇で七
輪を扇ぎながら杉本を見上げる。
忍「何って、秋刀魚を焼いているんだが」
杉本、溜息を吐き軽く頭を掻く。
杉本「今のは俺の訊き方が悪かったっす。先
輩は何でここで秋刀魚を焼いてるんすか?」
忍、団扇を地面に置きビニール袋を漁る。
忍「親戚がたくさん送ってくれてね。一昨日
から三食秋刀魚生活をしてるんだよ」
忍、ビニール袋から紙皿と割り箸を取り
出し笑顔で杉本に差し出す。
杉本「いや、俺は食べませんよ。終わってな
い制作あるんで」
忍、微笑みながら頷きビニール袋から醤
油を取り出す。
杉本「いや、だから食べませんって」
忍、一瞬目を丸くする。納得したように
何度か頷いた後、ビニール袋からタッパ
ーに入った大根おろしを取り出す。
杉本「いや別に大根おろしがあっても食わな
いですって」
忍、目を細め杉本を見つめる。
杉本、呆れた様子で忍を見つめる。
忍、溜息を吐きビニール袋から酢橘を取
り出す。
杉本「いやそんなしょうがねえなみたいな感
じで酢橘差し出されても食わないんですっ
て。マジで今制作ヤバいんすから」
忍「……秋刀魚を食べる時間が無いほど追い
詰められているのなら、それは君のスケジ
ューリングにミスがあるんじゃないかい?」
杉本、目を丸くする。一度空を見上げ、
頭を軽く掻き、七輪の前に座る。
杉本「正論言われたので俺の負けです。カボ
スあります?」
忍「あ、カボスは無い」
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