2022-12-12 お題「約束」
「いつかのあなたへ」
濱津慎一……17歳。陸上部。上田と幼馴染。
上田隆……17歳。美術部。濱津と幼馴染。
〇高校2階・美術室(昼)
息を切らしながら窓の外を眺める濱津慎
一(17)。
校庭では大量のゾンビが歩いている。
濱津「クソ、どうなってんだよマジで……。
おい上田! そっち大丈夫か!? っと」
美術室の入口の方へ振り向く濱津。振り
向き切る前に画面外から投げられた原付
のカギを慌てて受け止め見つめる。
濱津「おい、お前これって」
上田の声「原付、駐輪場に停めてあるから使
えよ。悪いけど俺はここでリタイアするわ」
濱津、咄嗟に美術室の入口の方を向く。
濱津「はぁ!? リタイアってお前」
上田隆(17)、長机で封鎖された扉の
前で椅子に座り、膝に置いたスケッチブ
ックに鉛筆を走らせている。
上田「これ以上走んのキツイんだわ。だから
すまん、俺はここまでということで」
濱津の声「いやいやいやお前ここまでって…
…。死ぬんだぞ! いいのかよ!」
上田「あー、まあ」
上田、スケッチブックから顔を上げる。
扉に付いた窓から女性のゾンビの顔が見
える。
上田、濱津の方を向き微笑む。
上田「先輩に殺されるんなら、それもいいか
なって」
濱津、何かを言おうとするが止め、頭を
搔きむしる。
濱津「ああわかったよ! じゃあな! 幽霊
になっても俺の枕元には出るなよ!」
濱津、窓を開け、唾を飲み込み飛び降り
る。
上田「いつか描く、か……。やっぱ、先延ば
しになんてするもんじゃねえな」
スケッチブックに微笑む女性の似顔絵。
上田「……よし。先輩、約束守りましたから
ね。せめて、優しくお願いします」
上田、立ち上がり入口の扉を開ける。
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