2022-11-14 お題「自転車」

「フツーに馬鹿」


大野達也(20)……大学生。漫研の部員。

絹旗茉優(21)……大学生。漫研の部長。


〇漫画研究会部室(昼)

  窓際の本棚にびっしりと漫画が並べられ

  ている。壁にはいくつもアニメのポスタ

  ーが張られており、開放されている窓の

  外に大きな木が見える。

  木にとまっていた蝉がどこかに飛んでい

  く。

大野の声「はぁ……はぁ……先輩、俺……も

 うそろそろ限界かもです……」

  机の上に麦茶が注がれたコップが二つ置

  かれている。そのうちの一つから、氷が

  コップに当たる音が響く。

茉優の声「もうかい……? 全く堪え性のな

 い……。もう少しだけ頑張ってくれたまえ

 よ、ほら、いっちに、いっちに」

大野の声「頑張れって言われたって……もう

 、マジで、はぁ……限界っす……」

  床に置かれた扇風機のファンの回転がゆ

  っくりと止まる。

  扇風機の前に胡坐で座る絹旗茉優(21)

  、そのまま上半身を後ろに倒し寝そべる。

茉優「おいおいおい大野君、扇風機が止まっ

 ちゃったぞ~……。速く動かしておくれ~

 ……」

  扇風機から伸びるコードの先には自転車

  発電機の装着されたママチャリ。大野達

  也(20)、ママチャリに跨ったまま荒

  い呼吸を繰り返している。

大野「いや……先輩……流石に無理が、あり

 ますって……俺もう、二時間は漕いでまし

 たよ……」

  大野、ママチャリから降りてコップに入

  った麦茶を飲み干す。

大野「てか、なんで一個しかない扇風機がこ

 んな愉快なことになってんすか……」

  大野、ママチャリと繋がった扇風機を見

  る。

茉優の声「だって、面白そうだったんだもん」

  大野、溜息を吐いてコップに麦茶を注ぐ。

大野「……先輩、フツーに馬鹿ですよね」

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