第4話 <民間人を選んだ私>
しかし、当時(45年前)は、中卒でタイル屋とか左官屋になり、数年で独立して毎日朝9時から5時まで仕事をやり、晩酌つきの夕ご飯、年に何回かは家族で遊園地へ行き、夏は海水浴、奥さんは主婦業に専念して一家4人で楽に生活できる、という時代でした。
早い話、税金が安かったので、なにもかも(物価が)安く、人心もゆったりとして、のんきに暮らせる時代だったのです。
ですから、収入が安定しているとか、クビにならない、という理由で公務員になる、という選択肢は(私には)全くありませんでした。
大学卒業後に入った商社では、朝6時起床、前日の夕食を朝飯に食べ家を出て8時に出社、日中は客先周り、昼は立ち食い蕎麦、夕食なしで19時から23:30の終電までワープロで資料作り。毎週1~2回は徹夜、一日は東京駅6始発の新幹線で京都・大阪・奈良へ出張、大阪発20:30の最終東京行き新幹線で23:30に帰ると、そのまま会社へ行きFAXなどで海外へ連絡を取る。
土日祝日は自家用車で会社へ行き、資料作り。深夜3時に会社を出て、代々木のホープ軒というラーメン屋でタクシーの運ちゃんに混じって夕ご飯代わりのチャーシュー麺、という生活を3年間やっていました。
「私が体験した公務員」に比べれば何十倍もキツかったのですが、あれほど充実した日々はない、というくらい何十倍も楽しい生活でした。アメリカ駐在員時代の5年間、その後、禅寺の坊主になってからの6年間は、やはり緊張感・切迫感が希薄という点で、給料はよくても、充実しているという実感がほとんどない生活でした。
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