11.5E (第1章前編5話のE)
―言い終わらないうちに,冬
「生きてる……本当によかった,無事なのね,
「お母さま,あたしは……」
「魔王に無理やり連れ出されたんだろう?,雉ちゃんはなぜ謝ろうとした?,
と言うより,私のほうが謝るべきだ。魔王の幻影は壁をすり抜けるからなぁ……,
この通りだ,どうか許してくれ」
「お父さま!?,か,顔を上げてください……!」
2つ年下(※もうすぐ15歳)の弟は,父の子爵をまねて,先ほどの姉よりも深々と頭を
下げたが,自分だけすぐ上げた。
「受験の補習を受けている時に,教室へ父上が飛び込んできたんだ。それで中学から引っ張り出されてさ…,何事かと思ったら姉さまが行方不明って,―飛んで来たよ」
「朋雉も……来てくれてありがとう」
再開を心の底から喜ぶ子爵と家族を見て,先ほどの冷たい眼差しが,不可抗力と知りながらも自責の念にかられている為,と気が付いた秘書官へ,ロジャーが声をかける。
「先ほど小官が申しあげようとしたのは,リスバーン子爵閣下は自他ともに認める親バカでして,その家族もご覧の通り『魔王による家庭崩壊の呪い』がほとんど効いておりませんので,グリンフェンさまの為に何でも利用すると称して,我が国の提案を受け入れると見込まれる,という事です」
「なるほど,それなら話が早い。隆倉大臣,応接室へ彼らを案内します?」
「うむ,そうだな。あの,リスバーン子爵閣下,お取り込み中のところ―」
「何ですか?」
それから一同は慌ただしく応接室へ向かった。ウーヅから聴き取った事を踏まえて今後の対策の打ち合わせをする為だが,八皓1号踏切のところで待機する事を参謀総長が進言し他の高官と子爵家の面々,どちらもが頷き,雉くんとウーヅは
雉くんが外し,壊れないようにと預かった眼鏡を返してもらうと,ため息をつく。
この日2人きりとなるのは,何回目なのか。雉くんに背中を預けて,ウーヅは裸足からサンダル履きになった足で立ち,橋の取り付け築堤を眺めていた。
沈黙が続いた後,背中合わせのまま腕組みをした雉くんが切り出した。
「今日の事をさ,ウーヅ。
「いったい,何の事ですの?」
「貴女が魔王に捕まった直後の……
「それはどうして?, 雉くんがあたしを裏切るとは思わないし,思いたくもないの。
―ずっと前の約束を作り出す…演出の為わざと魔王を呼んだとでも?。どうして 雉くんが,自分の事を酷く言うの?。そんなの聞きたくない……」
「本当か?, 俺を嫌うようにならないか?」
そんな事は無い―,たった一言が,ウーヅは言いたくても出てこなかった。
だから代わりに,雉くんから背中を離して振り向いた。そして耐火フードを頭から下ろし,ケープから出た真っ白な両腕で,彼の背中へと抱きついた。組んでいた腕を
ほどいた雉くんは,右肩に乗っかってきたウーヅの頭へ,思わず左手をまわす。
やがて離れると,ウーヅは頬を紅くしながら,雉くんの前に移る。口元を
(「あたしより,3つだけ
一方応接室では,魔王に捕まったグリンフェンを速攻で幼馴染が救った事の経過と,双瑞国鉄および相互乗り入れを行う私鉄各社の路線網を活用した,ドクダミ庁による警固の案の,詳細な内容とそれを本人へもう伝えている事,この3点の説明を受けていた子爵夫妻と息子が,聞き終えるなり即座に承諾していた。
「魔王ウィリアム……許せん……。だが今は,おとなしくしておこうか……。
―それにしても,雉ちゃんは本当に,昔のお父さんとよく似ているな。自分の事を後回しにして周りへ気を遣い,疲れ果てるという点が。なぁに,昔約束しただろ?,雉ちゃんの為なら,お父さんもお母さんも何だってする。勇者さまと,その主君の力を利用してやろうじゃないか。―連味 隆倉閣下,お気遣い,痛み入ります」
「父上,それは,姉さまを帝国が
「そうだよ朋雉,王都や中央政府へ,“心の問題で静養するが,期間を決めていない事と,本人の希望で帝国側に滞在する事”の二つだけ,報告しておけばいいさ」
「はぁい…,姉さま,どうかご無事で」
「雉ちゃんは,クラスの皆との高校進学を諦めてでも,生きたいと願っていたでしょう?,
だから元気でいてくれれば,わたくしは満足です。この話に乗りましょう」
ロジャー・今泉が指摘した通りの結果となった。
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おまけ:八皓駅の配線(略)図
南
_ 西―✛-東
↓Ⅼ 北
②⬜駅舎
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