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も宇瑛
第1章前編
11.1
「紙の地球」と呼ばれる世界に浮かんだ,イウルフ大陸にて。
眼鏡越しの視線を,木の間に走らせている青年がいた。
(「俺がここまで近づいても気が付かないようだ。何かの儀式でも始める気か?」)
そう思うと同時に,ためらう事なく,官給品のエストックの
いざとなったら,幻影もろとも使用者を,ついでに術者をも刺突すればいい。
口もとで唱える。すぐには抜剣しないで駆け出すと,
「魔王閣下。これは一体,何をなさっているのですか?」
と質問を口にしつつ,再び足を止めて挙手の敬礼をする。
魔王より,地面へ倒れている人影のほうが,先に青年の声へ反応していた。
眼鏡越しの視線を,木の間に顔ごと向ける女の子がいた。
「そのような話は―,何も分か……,何も知りませんの……」
懸命な抵抗も虚しく,女の子の耳へと押し込まれる,非情な宣告。
「やはりそうね。何か知っている事があれば,ここで解放しようと思っていたけれど,何も知らないのなら,絶対に見逃せないわね。―我が城へと連行する」
(「!?」)
インクブルーの黒目から,涙が溢れてくる。悲鳴どころか
(「―やめ,て……,死にたくない―,捕まるのはもっと
いるはずの無い幼馴染みへ,魂だけが訴えていた。 すると―
「お待たせ,発見が間に合ったかな」
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