第54話 正直解らない

フリージアは旅を押して来たのか、疲れて寝ている。


本当に急いできたんだろう…ルミナスさんやカルミーさんとの簡単な話が終わったら、すぐにウトウトし始めて倒れそうになった。


可哀そうだから、そのままベッドに運んで寝かせた。


よく見ると服はかなり汚れ、顔は窶れているような気がする。


目の下には隈が出来ていた。


『苦労したんだな』


それだけは良く分かった。


俺だって幼馴染に未練が無い訳じゃない。


恋愛相手に見られないだけで…


『愛』という意味ならあるのかも知れない。


自分の命より大切なのがルミナスさんやカルミーさんなら…


命の次に大切なのは、残念ながら幼馴染だ。


小さい頃から少し前までいつも一緒に居たんだ仕方ないだろう。


「リヒトくん、寝顔を見つめちゃって焼けちゃうわ」


「リヒト、やっぱりその子が好きなんじゃ無いのか?」


「好きか嫌いかと言われれば好きだけど!二人が思っている物とは違うよ…」


「「どういう事?」」


「そうだな、娘とか妹…そんな感じだよ…だって俺にとって理想の女性はルミナスさんやカルミーさんみたいな大人の女性だもん!多分、俺は早熟なのか、体は若いけど心は、まぁ二人の年齢に近いと思う…だから、家族、同い年なのに可笑しいと思うかも知れないけど、妹、娘…そういう感じかな?」


「まぁ、それは解るわ、リヒトくんと話していると同年代、ううん!年上の人みたいに父性を感じるから」


「私も同じだよ! あんなボロボロの私をあんな愛し方する人が年下なんて思えない」


「小さい頃から一緒に暮らしていたから『愛情』が全く無い訳じゃない! だけど、それは家族に対する思いで、恋人に対するそれとは違う…それに…」


「それに、どうかしたの?」


「どうかしたのか?」


「アホで馬鹿な親友…カイトが小さい頃から一番好きな相手がフリージアだった。だから、他の二人と違い、フリージアには一切そう言う目で見た事が無い『親友の恋人』そう思っていた…事実相思相愛だったんだ。もし、カイトが『勇者にならないで農民として暮らす』そういう世界があったとしても二人が結ばれて、リダかミルカがきっと嫁になる…だからフリージアだけは結ばれる未来は無かった筈なんだ…尤も大人の女性が好きな俺にとっては村から逃げられない、そういう話ならという事だけどね」


「そうね、私だとカルミーの恋人には手を出さない…それに近い事ね!」


「確かにルミナスの恋人…そう思っていたなら恋愛対象から外すな」


「まさにそれだよ…それに酷いと言われるかも知れないけど、幼馴染は大切だけど、2人と違って自分の命以上に大切な訳じゃなく、命の次なんだ…明らかに『好き』に差があるから困るんだ」


「「そうね」」


「正直どうして良いか困る」


「まぁフリージアさんも寝ているみたいだし、少しお話しましょう」


「うん、それが良い」


こうして3人で今後どうするか、話し合いをする事になった。


◆◆◆


「それでリヒトくんはどうしたい?」


「まずはリヒトの意見だな!」


「正直どうして良いのか解らない…」


「そうね、それじゃ暮らしてみて決めるのはどうかな?」


「まぁ、それが良いんじゃないか?」


「そんなんで良いの?」


「う~んとね、私位の年齢からしたらフリージアさんの歳は子供みたいな物だわ、娘みたいな存在になるのか妹みたいな存在になるのかは暮らして見ないと解らないわ」


「まぁ、私も同じだよ、だけどリヒトは、今後どうするか別にして、もう見捨てる気は無いよな」


「それは…そうだね」


「だったら一緒に暮らすのは確定で、その後の関係は手探りでやっていくしか無いんじゃないかな?」


「まぁ、それしかないだろう? 元々私達は三人目を迎える予定だったから…全く知らない相手よりは良いんじゃないか?」


「確かに、明日フリージアが目覚めたら、話しあいをするしか無いね…まぁ暮らすのはフリージアが嫌がらなければ確定で、そこからどうするかは明日だね」


どう言う関係になるのかは正直解らない。


ただ、俺は甘いのか見捨てる。


それだけは出来そうもないな。




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