第53話 なんでこうなっちゃったんだろう…
「それで、リヒト!そのおばさんなに?」
「失礼ですね!私はリヒトくんの妻です!」
「私も妻だよ!なにか文句ある?」
フリージアの目が怖い。
俺の目には、2人と1人の間に物凄い火花が飛び散っている様に見える。
「リヒト…妻ってなにかな?」
「妻は妻だよ! まぁ奥さん…そう言う事だな…」
「あの後、すぐに結婚したとは考えられないわ! という事は、あの時には既に結婚していた、そう言う事じゃ無い!」
今更、嘘を言っても仕方が無い。
「そうだよ…それは悪かったとは思うよ!だけどな!逆の立場だったらどうだ!ハーレムパーティの一員で、自分の親友に抱かれていた女、勇者パーティだから最後の一線は越えていない!そう言うが、4人で裸になって寝ていたのは何回も見たんだぞ!恋愛対象として見られるか? しかも、カイトとイチャつきたいが為に俺は追い出されたんだぜ!」
失敗した。
横に二人が居るから『ゲス』になる訳にはいかない。
『嫌われるなら徹底的に』
それが出来ない。
困ったな。
これが今言える精一杯だ。
此処から先が思うように言えない。
「それは…悪かったと思っているわ…だけど!あのね…」
「俺がした事は悪いと思っているよ、だがな!お前達にはもう関わりたく無かったんだ!正直いえば、お前等と旅なんて行きたくは無かったんだよ、最初からな!フリージアに聞くけどさぁ、何も貰えない、そんな中で面倒事は全部自分に押し付けられる…そんな奴らと一緒に居たいと思う?」
「…思わない…」
「だろう? 俺の親は早くに亡くなっていて、フリージアやカイト、リダやミルカのおじさんやおばさんにはかなりお世話になっていたから『どうか面倒を見て欲しい』と言われ、断り切れず、恩があるから仕方なくお世話していただけだよ」
「あの…」
「孤児だった俺を助けてくれた人の子供。だから半分恩返しで旅を手伝っていた。それだけだよ!まぁ、ギルマスや王からも途中から頼まれて逃げられなくなった!それも大きいけどね」
「…」
「俺から去るのは抵抗があったけど!散々イチャついて『ハーレムパーティに必要ない』そういう状態で追い出されるなら流石にもう充分だろう?もう、貰った恩は充分返した筈だ。関わりたくないよ…本当に…マジで」
まぁ、勇者パーティの傍に居たからレベリングさせて貰えた。
そういうメリットはあったが、それを言う必要は無いよな。
「そう…それじゃ、恨んでいるんだ…」
「いや、それは無い! 幼馴染だったせいか、憎しみとかは全く無いよ!だけど、結婚相手とかには考えられないだけだ…だってそうだろう? 俺の望む結婚相手は包容力があって俺を見てくれる人だから…友達とは思っているから恨んではいないよ…ただ、もう面倒くさいから関わりたくない…それだけだよ!」
「そう…解ったわ…ゴメンなさい、さようなら…」
これで終わった。
もう大丈夫…
「待って、話は聞いていたけど、そんなんで本当に良いの?」
「フリージア、あんたのリヒトへの思いはそんな物なの?」
「何が言いたいの!」
「フリージアさん、貴方は聖女でしょう?聖女とは本来慈しみ深い存在の筈です」
なっ…
「まだ、若いんだもの仕方ないさ、これから取り戻せば良いのさ」
「ちょっと、ルミナスさん、カルミーさん」
「何を言って」
「うふふふっ私が家事を教えてあげるから、花嫁見習いから始めてみない?」
「どうかな?」
「どうかなって良いの?」
三人してこちらを見つめてくる。
なんでこうなっちゃったんだろう…
「解ったよ」
完全に今迄の苦労が水の泡だ。
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