第51話 まだ終わってなかった

これで、全てが終わった。


これで本当に全てが終わったという安心感がこみ上げてきた。


これでカイト達とは永遠のお別れだ。


だけど、胸が少しチクリと痛んだ。


俺にとってはルミナスさんやカルミーさん以外の友人。


それはカイト達勇者パーティだ。


小さい頃から一緒に過ごしていたから、情はある。


これしか無かったから...した。


幼馴染を斬り捨てたせいか、なんだか寂しさを感じる。


特にあのフリージアの目...悲しそうだった。


フリージアには本当に悪い事をした。


これで縁は確実に切れただろう。


流石に自分のハーレムパーティの女を犯しかねない人間をカイトも傍には置かないだろう。


『これでもう安全だ…脅威は去った』


これで良かったんだ。


そうだよな?


◆◆◆


「顔が少し暗いけど、勇者カイト達との話はうまくいったんだな、良かったじゃないか」


「良かったわね」


少し後ろめたいが…もう終わった。


2人に事情を話す必要は無い。


「まぁね、話しは済んだよ…もう追って来ることはないから安心だよ」


「「そう良かった(ね)」」


これで良かったんだ。


俺にとって大切なのは、2人であって幼馴染の4人じゃない。


◆◆◆


暫く進み帝国領に入る頃、勇者パーティ黒羽の翼が解散された事をギルドの情報で知った。


カイト達が死なないで済んだ事に胸をなでおろした。


例え、そんなに仲が良く無くても『幼馴染』には死んでは貰いたくない。


自分が調べた『廃棄勇者』が役にたった。


そう思うと『書き残して良かった』と心から思った。


ただ、これで恐らく、魔族との前線は王国にさらに食い込んでいく。


やはりルミナスさんは宿を手放して正解だった。


恐らく数年であの辺りまで戦火は広がってくる筈だ。


カイト達が勇者を辞めた事で、大勢の人が死ぬかも知れないが…俺は知らない。


俺は物語の主人公じゃない。


魔族相手に無双できる力など無いから…大切な物を救うので手一杯だ。


「勇者は負ける前に解散か…」


「思ったより早く事態は進んだみたいね…リヒトくんが言う通り手放して良かったわ」


「此処まで早く事態が進むとは思わなかったけどね…旅を急いだほうが良いかも知れないな」


「「そうね」」


もう安心な場所まで来たが…心配性な俺は更に先を急いだ。


◆◆◆


「あはははっハァハァ、リヒト来ちゃった」


「なっフリージア...」


「人が急いで掛けつけてあげれば…おばさん相手にイチャイチャと何をしているのかな? かな? リヒト!フリージアじゃないわ?…なんで他の女と居るのかな? 私の事が好きだと思ったから…聖女の地位も全部捨てて此処まで来たのよ!」


可笑しいな...


フリージアの好きなのはカイトであって俺じゃない。


あれで円満解決した筈なのに...なんでフリージアが追って来るんだよ。


「リヒト、これはどういう事なのかな?」


「説明してくれるわよね」


「ああっ...」


2人の顔が魔王みたいに...怖い。


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