第43話 勇者SIDE 本音で話した日(旧題:謝罪必要)

このままじゃ絶対にこの先困る。


だから、今日は一日完全に休みにして今後どうするか?


徹底的に話し合う事にした。


今現在、俺達は『愛し合っている』だが、その中には割り切って付き合っている部分もある。



魔王討伐迄は今の恋人関係を続け、それを成し遂げ終わった時には一旦清算をして、今後どうするか話し合って決める。


そう話し合いで決めていた。


勿論、三人を俺が愛し、三人も俺を愛している。


それは間違いではない。


だが、魔王の討伐を成し遂げたなら、世界が変わってしまう、王女や王族、貴族からの縁談が来る可能性も高い。


打算的と言われるかもしれないが、良い縁談があればそちらも考慮し、良い話がなければ、このまま4人で結婚。


そう考えるしか、俺達には選択が無かった。


将来、失敗しない様に…そう決めていた。


リヒトが居なくなり、見せつける相手が居なくなるとイチャイチャするのがそんなに楽しくも無いように思える様になった。


まして、お互いが雑用でボロボロで汚くなってしまったせいか、その気にならない。


最近では俺はあの日、リヒトが言った事を強く思い出すようになってきた。


◆◆◆


『良いか? カイトは貴族になる。しかも婚姻相手は王族の可能性が高い。3人はカイトの側室になるか、それぞれの団体が斡旋してくれた素晴らしい人の妻になる可能性が高いんだ』



『良いか? フリージアは聖女、教会、しいては聖教国が後ろ盾なんだ。無事に魔王を倒せば甘々の教皇が何でもしてくれる。それこそ縁談を望むなら『聖教国の白百合』と呼ばれる公爵家のアーサー様や『麗の聖騎士』ランスロット様との縁談だって舞い込んでくるんだぞ…知らないのか?』



『ミルカだってそうだ、アカデミーと王国が後ろ盾だ『智の天使』と言われるミカエル様あたりの縁談がくるかも知れないし、リダだって傭兵ギルドや帝国が後ろ盾なんだから場合によっては帝国の『赤毛の貴公子』サンジェスト様あたりとの婚約もあり得ると思う』



◆◆◆


三人ももしかしたら同じ事を考えているのかも知れない。


こんな考えが出た時点で、もう『愛』ではなく半分打算だ。


だが、俺達勇者パーティは魔王討伐まで離れられない。


だから、こう言う形で話を治めるしか方法は無いんだ。


リヒトに戻ってきて貰うには...リヒトをこの輪の中に入れれば良いのか?


そういう訳には多分いかない。


リヒトは生真面目で、好きになった奴には一途だ。


打算を嫌う筈だ。


それは幼馴染だからこぞ良く解る。


だから、彼奴に行く奴は本音は兎も角、この旅が終わるまでは『彼奴と一途な恋愛』をしないと駄目だ。


最後まで騙しとうすか、全てを捨ててリヒトをとる奴じゃ無いと無理だ。



「それで誰が行くんだ?」


打算はあるが、それでも俺は3人を愛している...


だが、最早これを決めない訳にはいかない。


「カイト、勘違いしないで、誰が行くんじゃなくて『誰をリヒトが好きなのか』それが一番大事だわ」


「此処に戻らせる条件だからね!リヒトの権利の方が強いんだよ」


「そうだね」


「そうだな、それじゃフリージア、リダ、ミルカ誰を彼奴が愛していたか解るか? 身に覚えのある奴いる? 手を挙げてくれないか?」



嘘だろう…3人全員か…


「なんで全員手を挙げるんだよ…身に覚えがあるのかよ!」


「そうね、あそこ迄、私の世話は愛が無ければ出来ないと、思うわ」


「家事は全部1人でやってくれていたもんね」


「下着まで洗ってくれていたし…私剣聖で動き回るから…結構服は汗だらけで汚れるから…うん、なかなか出来るもんじゃ無いよ」


そんな事を言いだしたら男の俺まで範疇になるぞ…


「好きになれば良いなら、私がやろうか? お芝居とか騙すんじゃなくて、良く考えたら、うん婚約で良いかも!」


「リダ、どうしたんだ急に」


「「…」」


「いや、良く考えたんだけど、私って剣聖じゃない? 仕事に困らないし、魔王討伐後に地位を貰うとしたら絶対に戦闘系の地位だと思うんだ、それに私はガサツだから、しおらしく家事なんて出来ない…なら、リヒトみたいに家事が得意な男と結ばれた方が幸せなのかも知れないな、そう思ったんだよ」


「それを言い出したら、賢者の私は詠唱までの時間を稼ぐ前衛が必要だし…恐らく褒賞で貰う地位は研究職での地位が高いから、お世話してくれる相手が理想かも、私が行っても良いよ」


「そんな事言いだしたら、私だって聖女だから稼げるし…両方が当てはまるわ」


「三人ともリヒトで良いのか? それで誰が行くんだ」


「カイト、今ちょっと思ったんだけど私達、お互いに必要なのかな…」


「フリージア、一体何を言っているんだ」


「いえね、お互いに『本当にこの人じゃなくちゃ駄目』そういう間じゃないわ…少し前まではそう思っていたけど、今は違うんじゃない?魔王討伐が終わった時に、もし良縁があったら乗り換えようなんて打算的な関係よね」


「確かにそうだな」


「確かに私…まぁ今更だよね」


「うん、可笑しくなってきてる…もうバラバラだよ」


リヒトからもっと良い縁談が舞い込む…それを知らされてから…


もう、俺達の感情はお互い恋愛では無くなっていたのかも知れない。


「だから…どうするんだよ!」


「私達じゃもう無理なんじゃないかな?」


「リダ…それは無いわ、リヒトと付き合いのある女は、私達以外いないわ」


「私もそう思う!他には居ない筈だよ」


「確かに周りに居る女は私達だけだよ!だけど考えてみて、最後の一線は越えてこそないけど、友達に抱かれた様な女を恋人にしたいと思う? カイトとそういう関係になっている私達って、リヒトは相手にしたくないんじゃないかな?」


「笑いながらの円満離隊!そうね、私達に恋愛としての興味がないから去っていけたのかもね」


「だけど…それじゃどうする事も出来ないって事?」


「もう駄目って事かよ!」


「違うよ!リヒトにとってカイトは親友で、私達三人は幼馴染。そこは恐らく崩れていないと思う!あそこ迄世話してくれていたんだから大切な存在なのは間違いない筈だよ!」


「だから、何が言いたいんだフリージア」


「この際、一旦旅を止めてリヒトに会いに行こうよ!そして皆で謝ろう『追い出して悪かった』『私達にはリヒトが必要だって』土下座しても良いからさ。友情、幼馴染その気持ちに縋ったほうが良いんじゃないかな? カイトには悪いけど、リヒトが帰ってきてくれたらカイトとの恋愛もいったん白紙にして、仲良し5人組から始める、それ位しないと不味いと思う!リヒトは多分私達の誰かが好きなのかも知れない!いや多分好きな筈だよ!だけど拒んで親友の女になり『傷つけた相手』でもあるから嫌われていても可笑しくない。『謝罪』そこから始めるしかないと思うけど…どうかな!」


「フリージアの言う事は解るよ、だけどちゃんとリヒトを愛する人間は必要だと思う!もし許して貰えても、また孤立させたら、次はもう終わりだよ」


「そうだね…誰が、それは旅の途中で考えれば良いんじゃないかな? たどり着くまで時間は沢山あるからさぁ、取り敢えず今は謝罪をする為に、迎えに行こう!」


「そうだな、善は急げだ…取り敢えず、すぐに追いかけよう」


こうして俺達は旅を止めてリヒトの元に向かう事にした。








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