第44話 返せない恩/ 引き返してくる勇者
「最近、リヒト様の受けた依頼ですか?」
「ああっ教えて貰えないかな?」
リヒトの事が気になった私は冒険者ギルドに情報を求めに来た。
「まぁ夫婦だから…特別ですよ…『盗賊村』の討伐依頼ですよ」
「盗賊村?」
「村全員が盗賊をやっている村がありまして、リヒト様が討伐を受けたのですが…既にオークに滅ぼされた後だったらしく依頼は未達成となっております」
「その情報見させて貰える?」
「特別ですよ」
この場所は、あの村だ…
私が暴力を振るわれた、地獄のようなあの場所だ。
だが、凄い事に、村人は女、子供まで全員がオークに殺された事になっていた。
「そう言えば、ギルマス変わったんだな」
「それが受付嬢の子と一緒に居なくなったので駆け落ちしたんじゃないかという噂です」
「そう?そうか悪かったね」
なんだ、誰を殺したのか考えていたんだけど…私に関わった奴ら全員じゃないか…
あの村を盗賊事多分、皆殺しにしたんだ…
その上でオークを使い…まさかと思うけど…オークも殺していたりして。
流石にリヒトの性格じゃギルマスや受付嬢は殺していないと思うけど…多分、私の事を考えて追い払ってくれたんだと思う。
人として…そう考えたら良い事じゃないのかも知れない。
だけど、女として、私の『夫』そう考えたら最高だよね。
しかし、貰ってばかりで私は一体何を返せば良いんだろう。
そりゃ、リヒトは私やルミナスが凄く好きだから…綺麗にして…セクシーな下着を身につけて夜の営みをすれば凄く喜ぶけどさぁ…
あれは…なんか返した事にはならないんだよなぁ…
だって、ルミナスも私もおばさんだから…
私達位の年齢の女性が、あの年齢の子と恋愛して性的な事をしたければお金を払うのが普通なんだよな…
貴族の女がお金を払って若い子を愛人にしている話も聞いた事あるわ…
下着はリヒトが喜ぶけど…リヒトの物じゃなく、本来は私達の物だし…
肝心の夜の営みは…あはははっ声が出る位だから…そのリヒトに気持ち良くして貰っている。
つまり…リヒトが喜んでいる事もよく考えればリヒトに何かあげた状態じゃない。
ルミナスは兎も角…私は大きな借りがありすぎる。
最早返しようが無いわこれ。
今の所、これしか無いのかな?
「何か凄い下着ある?」
「あんた達凄いわね…相手が若いとやはり刺激的な物が必要なのかな…何時も凄くきわどいのばかりだね…仕入れたよ…ほら」
なんだこれ、ブラがほぼ只の紐だ…ほぼ全部丸見え…下も紐だよ。
普通のTバックじゃなくて…ほぼ紐じゃない…
「そうね、買うよ」
仕方ないよな…今はこれしか恩返しが思いつかないんだから…
◆◆◆
冒険者ギルドに、勇者パーティーの動きを教えて欲しいと依頼を出しておいた。
まさか、あいつ等が『俺を探しながら追ってくる』とは思って無かった。
この場所に留まっているのに気がつかれたら…不味い。
流石にすぐに此処には来ないだろうが、何時かはこの場所に気が付くかも知れない。
彼奴らが知らない場所に逃げた方が良い。
だが、此処にはルミナスさんの宿がある…
これはルミナスさんにとっては思い出の詰まった大切な場所だ。
どうしたら良いのか解らない…
最悪の場合は…カイト達に相手の気持ちなんか考えずに、傷つける事を含んで、思いっきり罵詈雑言を浴びせるしかないかも知れない。
恐らく揉めるだろうが…彼奴らはプライドが高いから、これなら、去っていくだろう。
恨まれたくないが『土下座して俺の足を舐めろ』この位言えば大丈夫だろうか?
だが、これをやると世間や教会も敵に回して不味い事になるかも知れない。
一番楽なのは逃避行だけど…
宿を大切にしているルミナスさんに言いづらい…
だが、此処迄きたら仕方が無い、今日の夜にでも相談するか…
まさか勇者が職務放棄して引き返してくるなんて思っても見なかったな。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます